ラボの休憩室 Vol.21 製薬マーケターは1/3でいい時代になる!?
このコーナーでは、製薬業界のデジタルマーケティングに長年関わってきたフォルツァ氏に登場いただき、ざっくばらんにお話していただきます。
なお、本記事に掲載されている意見は、参加者の個人的な見解に基づくものであり、参加者の所属団体や他の関係者の意見を反映するものではありません。読者の皆様は、内容をご自身の判断でご利用いただきますようお願い申し上げます。
取材年月 2026年1月
MR経験後、マーケティング部門にて多領域にわたる新薬ローンチ・効能追加時のプロモーション戦略策定、実行に10年以上従事。現在は、シニアマネジャーとして、セールス・マーケティング両面でのリード役を担う。 ■千葉 理洋(仮)
DM白書ラボ フェロー。
※肩書は取材時のものです。
目次
生成AI登場後の製薬マーケターの役割とは?
| 千葉氏 | 今日は、これまで何度かでてきた「チェンジマネジメント」がテーマです。まず、フォルツァさんのお考えを詳しく教えてください。 |
|---|---|
| フォルツァ氏 | 僕は、まずはMR、次にマーケター、そしてトップマネジメントも変わる必要があると思っています。 |
| 千葉氏 | はい。 |
| フォルツァ氏 |
これは、生成AI活用という文脈が入ってきてから、より一層強く感じています。生成AIをうまく活用していこうと思うと、現場の動きだけでは難しいです。新しい技術を取り入れるためのリソースが必要ですが、投資対効果が見えないですし、上を説得しきれない。 トップダウンで「生成AIを活用せよ」という指示が出て、ある程度のバジェットをもらえない限りは進まない。 |
| 千葉氏 | ある程度それができている会社は、生成AI活用も進んでいますね。 |
| フォルツァ氏 | はい。そういう環境があればPoCもガンガン回せます。一方できない会社は、いまだにマーケティング活動が旧態依然としていて、「大きいWeb講演会を7000万くらいかけてやった方がいいだろう」みたいなやり方をしているんじゃないかな。 |
| 千葉氏 | AIを活用していく必要がある半面で、過度な期待はできないことに最近皆さんが気づき始めているという印象があります。とくにAIを活用している人ほど気づいている。ただ、その気づきを得ている人がトップマネジメントかというと…。 |
| フォルツァ氏 | トップマネジメントがどこまで生成AIを活用しているかというと微妙ですよね。おっしゃる通り、「AIを使えば何でもできるだろう」みたいなことはあり得ないわけですよ。基本的にはルールベースから始めて、多変量解析とかデータクリーニングといったいろんな工程を経て、やっと期待する結果を得ることができる。いきなり成果を得られる、ってことはないわけです。 |
| 千葉氏 | AI活用といってもいろんなレベルがあると思いますが、フォルツァさんが想定するAI活用はどんなものですか? |
| フォルツァ氏 | まずは日常業務で使う。次に、ビジネスインパクトを生むぐらいのもの。さらに、そもそも働き方を変えるようなレベルの使い方。僕は最終的にはここを目指していきたいなと思っています。 |
| フォルツァ氏 | AIが全部を解決してくれるわけではないけど、僕は、マーケターの数は今の半分でよくなると思っています。 |
| 千葉氏 | 半分ですか。 |
| フォルツァ氏 | はい。もっと少なくてもいいかもしれない。今後の勝負は戦略と実行なんです。戦略を立てるところから入ってプランを作って、実行する。戦略と実行の間の部分はAIに置き換えていくことが可能だと思っています。 |
| 千葉氏 | たしかに、すでにAIである程度クオリティの高いものを作れますもんね。 |
| フォルツァ氏 | そうなんです。だから、最終的な決定と実行。この2つの勝負になるだろうと思っています。 |
生成AI活用のためにデジタル/オムニ部門に期待することは?
| 千葉氏 | 社内でのAI活用について、オムニやデジタルに期待している点はありますか? |
|---|---|
| フォルツァ氏 | それはちょっと悩んでいます。 |
| 千葉氏 | どういった点で? |
| フォルツァ氏 | 実は僕はAI開発もやっているんですが、片手間ではできないなって感じてます。大変だもん。 |
| 千葉氏 | 開発も含むと、高いリテラシーが必要ですよね。 |
| フォルツァ氏 |
はい。僕はまだ知識が不足しているから勉強しながら取り組んでいます。この分野の専門性がある程度あって、かつ、ビジネスが分かってる人が担当しないと難しいし、工数がすごくかかる。 会社の規模や状況にも左右されますが、「オムニチャネルの人がやって」とか「ブランドマーケターがやって」という感じでは多分できなくて、専門の役割の人が必要だと思うんですよ。 だから、メガファーマは強いですよね。人がいるから。ただ、メガファーマはその分サイロ化が激しいから、やっぱりうまくいってない。 |
「文化」って言語化できますか?
| 千葉氏 | 製薬業界って、各社さん外に情報を出さないじゃないですか。まずは業界全体として情報提供を底上げしようみたいな動きがあれば、もっといろいろできる気がするんですけどどうでしょうか。 |
|---|---|
| フォルツァ氏 | 僕は個人の活動としていろいろやってるけど難しいよね。まあ時間かかります。みんな出るの嫌がるし。 |
| 千葉氏 | 確かに表に出て発言するのはリスクがありますね。 |
| フォルツァ氏 | 公の場で発表するって結構怖いんですよ。まず会社が嫌がるし、個人もリスク負う。批判もされるし。僕はリスクを取ってますけど、リスクを取れる人はあまりいない。覚悟がない人が多いですね。 |
| 千葉氏 | アステラスさんのインタビュー※1で、「オムニチャネルはカルチャーであり、会社としての情報提供のあり方をどう作るかという文化づくりだ」というお話がでました。テクノロジーだけがあっても、テクノロジーを使う文化がないと機能しない。「文明があっても文化がないと成り立たない」ということをお話されていて、印象的でした。 |
| フォルツァ氏 | そう。文化を作るのは難しいです。ところで、文化って何だと思います? |
|---|---|
| 千葉氏 | 文化…。言語化が難しい……。 |
| フォルツァ氏 | 僕は、「共通の価値判断基準を持っていること」だと考えています。 |
| 千葉氏 | 価値判断基準、たしかに……! |
| フォルツァ氏 |
何かの事象に遭遇したときに判断できる基準を持っているかどうか、それが一致しているかどうか。僕はそう定義づけをしています。 文化を変えるなら“文化はこうなんだ”と言語化をする必要があります。 |
| 千葉氏 | あぁ。定義づけがあいまいになっていることはよくあります。 |
| フォルツァ氏 | ふわっとしているものが多い。「チェンジマネジメント」もふわっとしているし、「オムニチャネル」もふわっとしている(笑) |
| 千葉氏 | なんとなく「デジタルやってたらオムニチャネルかな……」みたいな(笑) |
| フォルツァ氏 | ふわっとしたままではだめで、定義づけからしっかり考えていくことが必要だと思っています。 |
| 千葉氏 | たしかに、共通認識を作っていくためには、言語化が大事ですね。 |
| フォルツァ氏 | そう。だからアウトプットが必要なんです。 |
AIが変えるメディカルコンテンツ制作、今後求められる製薬マーケターの役割
| 千葉氏 | ではオムニチャネルの5つの要素の最後「コンテンツ」について伺います。マーケターがプロモーションコンテンツを作るにあたって、デジタル/オムニ部門に期待している部分はありますか? 例えば、こういう層には動画の方がいい、といった表現方法の示唆をもらえる、といったようなことです。 |
|---|---|
| フォルツァ氏 | 今後、コンテンツは、例えばAdobeさんのサービスなんかを使って、お金をかけずに作れるようになっていったらいいなと思っています。ブランドガイドラインを読み込んで、条件に従って作成していく……みたいなかんじです。そうなったら、動画でも読み物でも簡単に作ることができますよね。 |
| 千葉氏 | たしかにそうなっていくのかもしれません。その場合でも最終チェックは人間がやるんでしょうか。 |
| フォルツァ氏 |
もちろん最終チェックは人間を挟むんですけど、前段階である程度精度の高いものができるようになるんじゃないかなって感じです。 今は例えば1コンテンツ作るのに300万から500万円とかかかっている。AIの精度がここまで高くなっている中で、そんなにかける必要あるのかなぁ。 コンプライアンス的な部分でまだ不安な点はありますけど、今後変わっていかざるを得ないんじゃないかなと思っています。 |
| 千葉氏 | メディカルライティングもAIがやれるようになる? |
| フォルツァ氏 |
できると思うんですよね。今※2、試しにGeminiとnotebookLMで色々作っているんですけど、すっごく綺麗。プロンプト自体も、AIとやり取りしながら作れば完璧なスライドが作れる。 もうマーケターいらないなと思いました。今まで3ヶ月かかってきたものをAIが即出せるようになる。コンテンツも一緒だと思います。なので、マーケターの数は半分と言わず、3分の1くらいでいいと思っていますし、それを目指しています。 |
- ※2 取材年月:2026年1月現在
| 千葉氏 | 3分の1! AIを活用した製薬マーケティングDX、ぜひやっていただきたいです(笑) |
|---|---|
| フォルツァ氏 | 面白そうでしょ(笑)製薬業界で大々的に発信すればみんな焦る。 実現したら発信します。相当反感買うと思いますけど(笑) |
| 千葉氏 | 「余計なことして…」って思う人もいるでしょうしね(笑) |
| フォルツァ氏 | でもね、今後、製薬マーケティングに人はいらなくなる。絶対いらなくなると思います。必要なのは、信念を持って最終的な決定をし、実行する人。いずれ、そういう製薬マーケターの育成にもかかわっていきたいと考えています。 |
| 千葉氏 | 大事なことですね。また、機会があればお話を伺わせてください。 |
「ラボの休憩室」は本記事が最終回となります。
デジタルマーケティング、チェンジマネジメント、営業、マーケティング、さまざまな立場から「オムニチャネル推進」を語っていただきましたがいかがでしたでしょうか。ユーザーにとっては同じものであっても、提供側にとってはさまざまな障壁があり、それを乗り越えるための挑戦が行われていることを改めて知る機会となりました。
「白書ラボ」での記事更新は最後ですが、今後別の場所で、会社間の垣根を越えた情報交換の場を作れればと考えていますので、その際はぜひ皆様の参加をお待ちしております。
(文:松原)
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