ラボの休憩室 Vol.12 本社のリーダーに必要なマインドセットって?
このコーナーでは、製薬業界のデジタルマーケティングに長年関わってきた方に登場いただき、ざっくばらんにお話していただきます。
なお、本記事に掲載されている意見は、参加者の個人的な見解に基づくものであり、参加者の所属団体や他の関係者の意見を反映するものではありません。読者の皆様は、内容をご自身の判断でご利用いただきますようお願い申し上げます。
取材年月 2025年9月
大手製薬企業、外資系製薬企業にてMRを10年以上経験後、営業部門(MR、マネージャー)の人材育成の担当者としてソフトスキル・オムニチャネルトレーニング、ローンチ時の研修に5年間従事、その後、DX推進者として、本社間、本社-MR間のコミュニケーションのハブとなってプロジェクトマネジメント、チェンジマネジメントを担当。 ■千葉 理洋(仮名)
DM白書ラボ フェロー
下が付いていきたくなるリーダー像とは
| 千葉氏 |
これまで、MR、本社側が持つべきマインドセットについてお話を伺ってきました。 今回は、本社のリーダー像、リーダーが持つべきマインドセットをテーマにお話伺いたいです。本社のリーダーのマインドセットには何が必要だと思いますか。 |
|---|---|
| セーダス氏 |
リーダー自身がビジョンを持ち、それを伝えるということに尽きると思います。 社長が示したビジョンを自分の部門やチームに落とし込み、組織の粒度に合ったビジョンを言語化して伝えていく必要があります。ロール(役割)が上がれば上がるほど話の抽象度が高くなりがちですが、そこに甘んじていてはダメだと思います。「社長がこう言っている」では、抽象度が高すぎて下の者には伝わらず、付いていけません。実際、抽象度が高いまま下へ落ちてきたものは、具体化することが難しく、みんなが疲弊しているのが実情です。 |
| 千葉氏 | そうなんですね。「マネジメント」だけではなく、「リーダーシップ」も重要ということでしょうか? |
| セーダス氏 |
そうです。そこさえあれば、いろんなリーダーシップスタイルがあっていい。 自分達の船がどこに行きたいのかをそれぞれの解像度で話せないと、下は付いていけません。リーダーの言語化力が高いと付いていきたくなる。また、下の人がゴールを描きやすいという点でも、言語化力の高さは、付いていきたくなる重要な要素です。 |
事業部やチームのビジョンはなぜ描きづらいのか?
| 千葉氏 |
業界的に、リーダーシップの能力はあっても発揮しづらい「何か」がある、ということはないのでしょうか? 製薬企業は生命関連産業ですし、だからこそ入社時にはみなさん何かしらの意志を持っていたと思います。自分なりのビジョンや意志があって、それを周囲に伝えるということはできそうな気がしたのですが。 |
|---|---|
| セーダス氏 |
昔の製薬企業は、生命関連企業として心から素晴らしいと思っていますし、時代に合った企業文化を育成していたと思います。実際、事業部として強いメッセージを発信していました。 ただ、今は役割が細分化されて、事業部だけで1つの製品を患者さんに届けられなくなっています。事業部の役割が変化し、昔のようなビジョンが描きづらくなっています。 また、役割が細分化される中で、顧客と直接関わらない部門も増えてきました。こういった部門が、全社のビジョンにアラインした部門やチームのビジョンを描きづらいということもあります。 |
| 千葉氏 | 顧客と直接関わらない部門は、現場感をキャッチアップできていないということでしょうか? |
| セーダス氏 | そうですね。キャッチアップしきれないという面もありますが、細分化される中で“キャッチアップしなくても良い”と考える部門やチームが出てきているのが現状です。ただ、やはり情報を取りに行って、医師や患者さんへの理解を深めないと、全社ビジョンにアラインした部門やチームのビジョンは作れないと思います。 |
| 千葉氏 | 部門やチームのビジョンを作る前段階として、横のラインでの役割分担を整理する必要があると思うのですが、この点はいかがでしょうか。 |
| セーダス氏 | ここはできつつあります。そのやり取りの中で横のライン同士が密接に関わっているので、変わっていくのではないかと期待しています。 |
| 千葉氏 | 役割が明確になれば、自組織のビジョンも描けるようになりそうですね。 |
| セーダス氏 | そうですね。ただ、役割が明確になればなるほど役割が細分化される弊害も出てきます。ですので、私のようなビジネスアーキテクトが、組織をクロスで見て行く必要性も出てきます。ここはバランスが大事ですね。組織の形って難しいと思います。 |
組織間のハブの存在意義って?
| 千葉氏 | セーダスさんのように専門家同士の間に入る人って貴重な存在だと思いますが、上からの評価はされにくいのではないでしょうか? |
|---|---|
| セーダス氏 | 評価……されてないのかな(笑)。いえ、貢献はできていて、評価されているとは思います(笑)。上司は重要性を理解してくれていると感じています。 |
| 千葉氏 | それは素晴らしいです。 |
| セーダス氏 |
ですが、そこは永遠の悩みでもあります。わたしはデータサイエンティストまではなりきれていないし、戦略を立てているわけでもないので、自分の仕事ってなんなんだろうって。 でも、まずは行動が大事だと思っているので、頭で考えるだけではなく行動を見せる。トレーニングのコンセプトと同じだなって思います。「こう考えればいいんですよね」がいくら身についてもダメなんです。 事業部とデータサイエンティストの間のハブになって物事を解決して、を繰り返してプロジェクトを複数回す、っていう行動の中で自分の役割の重要性を見せていくしかないと思っています。 |
仕事を楽しむ人をどう育てるか?
| 千葉氏 | セーダスさんのような役割を育てる研修プログラムってあるんでしょうか? |
|---|---|
| セーダス氏 |
ない(笑)。今はOJTですね。 ビジネスアーキテクトってフレームワークを学べるけど、学んだからといってビジネスアーキテクトができるわけではないし、ほんとに必要なのは何だろう? って思います。 |
| 千葉氏 | 必要なのは、「仕事が楽しめているか?」ではないでしょうか。「評価されないからやらない」という人ではなくて、「なんだかおもしろそうだからやってみる」という人が大事なのかなと。でも、こういう人をどう育てるか?については悩ましいですよね。 |
| セーダス氏 |
リーダーシップ開発がマッチするんじゃないでしょうか。自分と向き合って、仕事を楽しむ。ビジネスに思いを馳せてみる。自分を理解して自分に合ったリーダーシップスタイルを見つけるのが大事だと思います。 リーダーシップって、「どう人に影響を与えるか?」で、結果は一緒だけどやり方は人によって違います。 |
| 千葉氏 | リーダーシップこそ、今後単純作業がAIに移行していく中で人間が担う重要な部分じゃないんでしょうか。 |
| セーダス氏 |
そうですね!今後は意志決定や人や組織へ影響を与えることもAIに奪われてしまうんじゃないかという不安もありますが(笑) リーダーシップ研修って営業は楽しんでやるんですが本社の人はやりたがらない。今の時代、上のポジションに行きたいという人が少ないんです。リーダーシップが好きじゃない。細分化されてスペシャリスト志向が高まったということも1つの要因だとは思いますが。 |
MRのオーケストレーションにも言語化が大切
| セーダス氏 | MRがオムニチャネルのオーケストレーションを行う取り組みをされている製薬企業も多いですが、これはある意味MRがリーダーシップを発揮するということなので、すごく大事だと思います。 |
|---|---|
| 千葉氏 | 昔だと、コメディカルの方々、MSさん、他社のMRさんをオーケストレーションするみたいな感じで、そこにデジタルもプラスされただけではないかと思うんですよね。 |
| セーダス氏 | そう。できる人はできちゃいます。そういった、できる人の動き方を組織のナレッジとしていくためには言語化が大事です。何の行動がどう変わったのか、KPIにどうつながったのか、という思考力、それをアウトプットする力が大事だと思います。 |
次回は、医師の行動変容におけるデジタル施策の効果をどう考えるか?をテーマにお話いただきます。
(文:松原)
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