ラボの休憩室 Vol.19 生成AIが戦略も作れる時代、マーケターに残された仕事は?
このコーナーでは、製薬業界のデジタルマーケティングに長年関わってきたフォルツァ氏に登場いただき、ざっくばらんな内容をお聞きします。
なお、本記事に掲載されている意見は、参加者の個人的な見解に基づくものです。参加者の所属団体および他の関係者の意見を反映するものではありません。読者の皆様は、内容をご自身の判断でご利用いただきますようお願い申し上げます。
取材年月 2026年1月
MR経験後、マーケティング部門にて多領域にわたる新薬ローンチ・効能追加時のプロモーション戦略策定、実行に10年以上従事。現在は、シニアマネジャーとして、セールス・マーケティング両面でのリード役を担う。 ■千葉 理洋(仮)
DM白書ラボ フェロー。
※肩書は取材時のものです。
目次
マーケティング部門が考えるチャネルプラン
| 千葉氏 |
前回※1、オムニチャネルに必要な5つの要素のお話がでました。今回は、その5つの要素、チャネル、コンテンツ、プラットフォーム、データ、チェンジマネジメント、におけるプランニングと実行についてそれぞれお話を伺っていこうと思います。 まず、マーケ部門としてチャネルのプランはどうあるべきとお考えでしょうか。 |
|---|
| フォルツァ氏 | 僕は、ブランドプランにMR活動方針を含めたすべてが定義されているべきと考えています。ブランドプランは全員向け。オムニチャネル部分は本社のスタッフあるいはデジタルマーケター向け、活動方針はMR向け、という形です。 |
|---|---|
| 千葉氏 | ここでいうチャネルは何を指しますか? |
| フォルツァ氏 | プランに含まれるチャネルはMR、カスタマイズドe-mail、Approved Email、Webinar、3rdParty、オウンドサイト です。 |
| 千葉氏 | フォルツァさんの会社では、ブランドプランを作るメンバーはどのような役割の方なのでしょうか? |
| フォルツァ氏 | メディカル、オムニチャネル、デジタルマーケターです。全員が入った上で、マーケターがリードしてブランドプランを作ります。それがコンプレッシブなスライドデッキになる。これが理想だと考えています。 |
| 千葉氏 | なるほど。製薬各社さんからは、ブランドプランの中でオムニチャネルプランが組み込まれていないケースもよく伺います。例えば、ブランドプランの中にMR向けの活動方針があり、それとは別にオムニチャネルプランで「MRはApproved Emailを使いなさい」と指示がでている。 |
| フォルツァ氏 | よくあります(笑) |
| 千葉氏 | マーケ側とオムニ側のチャネルプランが統合されたプランを作るには、どうしたらいいんでしょうか。 |
| フォルツァ氏 | すごく難しいですよね。ステークホルダーが多いし。 |
| 千葉氏 | よくあるのは、マーケ部門でブランドプランを作成して、3rdParty部分をデジタル/オムニチャネル部門に依頼する、といった、部分的にオムニ部門と連携するケース。 |
| フォルツァ氏 |
そのやり方だと、3rdPartyを部分的に使う部分最適なプランにしかならないんですね。
部分連携でもなく、マーケターがMRだけで十分と思っていて、オムニ部門に相談しないこともあります。 本質的な問題に、マーケターが「自分たちのケイパビリティとしてオムニチャネルプランを含めたブランドプランを作りあげる必要がある」という理解をしていない、ということがあると思います。実はわたしのチームメンバーですらこういった意識が希薄だと感じることがあります。本当に理解しているのは少数。 |
| 千葉氏 | 今はMRで十分でも、今後変わっていきますよね。 |
| フォルツァ氏 | GeminiとかnotebookLMとか、生成AIがびっくりするほど賢くなってきていて、もはや生成AIが戦略も作れてしまう時代になっています。 |
| 千葉氏 | たしかに、最近の生成AIを見ていると、もう人間いらないな、と思わされます。 |
| フォルツァ氏 | はい。未だに自分たちのケイパビリティを理解していないマーケターには、「この先、あなたの仕事ってなんですか?」って問いたい(笑) |
| 千葉氏 | (笑) |
オムニチャネルなんてなくてもなんとかなる。今は。
| 千葉氏 | 前回もお話にでましたが、マーケ部門/デジタル・オムニチャネル部門が融合していくにはどうすればいいんでしょうか。オムニ部門からの働きかけがあれば変わります? |
|---|---|
| フォルツァ氏 |
変わらないと思います(笑) マーケターというのは、“その会社で選ばれている、優秀だ”という自負がある。加えて抱えている予算額も大きい。自分たちが会社を動かしているという気持ちが強い人たちです。 外部環境は変化してきていますが、給料は減らないし、“変わらないといけない”という危機感は起きにくいでしょうね。変わらなくたって生きていけるんです。まだね。 極論を言えば、数年の軸で考えたら、オムニチャネルなんてなくてもなんとかなります。疾患によりますが。でも、例えば5年スパンで考えたときは…? |
| 千葉氏 | 5年スパンだと変わっているかもしれないですね。 |
| フォルツァ氏 |
ね。だから準備をしていく必要があると思っています。 僕は、すべての患者さんに薬がいきわたるようにするためにはデジタルの力は必須だと考えています。これは絶対です。MRのカバレッジなんて知れていますから。 デジタル活用が不可欠だと思っているのは、僕の信念なんです。でも、こういう志を持ったマーケターは残念なことにほとんどいない。 例えば組織構造が大きく変わる、といった根本的な変化が起こらない限り、この問題は解決しないんじゃないかな。 最近は、マーケティング部門は1つで、営業部とは分離させるという組織構造のほうが今の時代に合っているんじゃないかと思っています。 |
| 千葉氏 | 人が変わるのは難しい、まず組織を変えないと、ということですね。 |
マーケティングチームの上層部が、変わる必要がある
| 千葉氏 | 組織を変えないと、ということですが実現には時間がかかることです。今の組織構造のままで、フォルツァさんの理想の形に近づくにはどうしたらいいでしょうか。 |
|---|---|
| フォルツァ氏 | まずは、マーケティングチームの上層部が課題意識を持てることがスタート地点だと思います。 |
| 千葉氏 | たしかに上の人から変わってもらわないと難しいですよね。 |
| フォルツァ氏 |
ただ、上層部はわけが分かっていない人が多いんですよね。役職が上がると業務がわからなくなる。僕もそうです。だから勉強している。 デジタル時代だからこそ、業務をある程度理解しつつ役職を上げていかないと、ヘリコプタービューを持てずに頓珍漢な指示をしてしまうんでしょうね。でもなかなか難しい。どうしたらいいんだろうね(笑) |
マーケ部門とデジタル/オムニ部門をつなぐ、ギブアンドテイクの形をどう作る?
| 千葉氏 | 別の製薬会社さんの話ですが、縦割りの部門を横につなぐビジネスアーキテクト的な役割の方が、各部門の連携に役立っている、と伺ったことがあります。 |
|---|---|
| フォルツァ氏 | うちの会社にも、僕の代弁者になるそういった役割の方が1人いて、この人が翻訳をしてくれています。 |
| 千葉氏 | やはりそういう方がいるとうまく回るんですね。 |
| フォルツァ氏 |
部門を横断したコミュニケーションをしてくれています。 このポジションは、テクノロジーとビジネスイシュー両面への理解を併せ持っていて、コミュニケーション能力とリーダーシップが必要。ただ、このポジションに必要な能力を持った人というのは稀有です。そうそういません。わたしが本当に信頼して任せられると思っている人は1人だけ。 |
| 千葉氏 | 1人ですか! |
| フォルツァ氏 | うーん、ほかに思い浮かぶ人もちらほらいますが…やっぱり1人ですね(笑) |
| 千葉氏 | このあたりはチェンジマネジメントも絡んだお話になりそうなので、また詳しく聞かせてください(笑) |
| フォルツァ氏 |
そうですね(笑) うちのブランドマーケターは、ビジネスアーキテクトからの知識をもとに3rd Partyの判断を行っています。オムニ部門が知識をギブしてマーケ部門が判断する、というギブアンドテイクが生まれていくと、マーケ部門とオムニ部門はうまく回っていくのかもしれないなぁ。 |
| 千葉氏 | サポート関係を作るということですね。オムニ部門が下から入ってマーケ部門をサポートしていく。 |
| フォルツァ氏 | 本当は対等であるべきなんだけどね。 |
| 千葉氏 | チャネルのお話が盛り上がりすぎてしまいました(笑) 次回は、オムニチャネルの要素2つ目、プラットフォームについてお話を伺います。 |
つづきます。
(文:松原)
●合わせて読みたい記事
-
ラボの休憩室 Vol.1 オムニチャネルが進まないのは誰のせい?
-
ラボの休憩室 Vol.2 NO.1ならいいんですか?データの表と裏を見る
-
ラボの休憩室 Vol.3 MR不要論を考える
-
ラボの休憩室 Vol.4 DM白書ラボを読む「新薬処方検討段階ごとに、必要な情報・利用チャネルは異なるのか?」
-
ラボの休憩室 Vol.5 生成AI活用のために取り組むべきことって?
-
ラボの休憩室 Vol.6 他部門は分かってくれない?マーケ・営業と共にデジタル推進をするために
-
ラボの休憩室 Vol.7 デジタル推進体制づくりで大切なこととは
-
ラボの休憩室 Vol.8 デジタル担当者に大切なこととは
-
ラボの休憩室 Vol.9 データドリブンで最適解を見つけるために必要なことは?
-
ラボの休憩室 Vol.10 データ活用に向けたマインドチェンジの進め方
-
ラボの休憩室 Vol.11 オムニチャネル時代のMRに必要なマインドセットって?
-
ラボの休憩室 Vol.12 本社のリーダーに必要なマインドセットって?
-
ラボの休憩室 Vol.13 デジタル担当がデジタルを軽視している!?
-
ラボの休憩室 Vol.14 製薬デジマ部門と営業部門とのギャップはなぜ生まれる?
-
ラボの休憩室 Vol.15 MRへデジタルの価値を伝えられていますか?
-
ラボの休憩室 Vol.16 プラットフォーム選定に必要なたった1つのこと
-
ラボの休憩室 Vol.17 製薬デジタル担当者に必要な3つのスキルとキャリアの描き方
-
ラボの休憩室 Vol.18 マーケターはプライドが高すぎる!?
合わせて読みたい
-
定量調査
-
定性調査
-
事例
