MR未リーチ医師は、新薬の情報収集・採用検討をいつ行っている?
「DM白書ラボ」では、DM白書本編には未収載のデータを提供しています。今回は、「MR未リーチ医師は、専門領域の新薬の情報収集・採用検討をいつ行っている?」について調査した結果をご紹介します。「DM白書2024年夏号(ラボ限定設問)」(n=5,079名)の回答を対象にしています。
MRと定期的に会っていない「MR未リーチ医師」2名へのインタビュー結果では、両医師とも処方意向は「新薬を進んで処方検討する」であり、承認前の薬剤情報は、MRではなく自身で収集し、情報収集段階で薬剤の採用決定を行っていました。
>> 医師インタビュー「MR未リーチ医師の、疾患・薬剤情報収集方法 ‐ 大学病院勤務医師編 ‐
」
>> 医師インタビュー「MR未リーチ医師の、疾患・薬剤情報収集方法 ‐ 公立病院 勤務医師編 ‐
」
本調査では、医師インタビューから導き出した仮説「MR未リーチ医師は、薬剤の発売前に情報収集し、発売時に採用決定の可否が決まっているケースが多いのではないか?」について検証します。
目次
前提条件
・MRと定期的に会っていない医師「MR未リーチ医師※1」に限定して集計。
- ※1 設問「2024年1月~3月末で先生が定期的に取得されていた情報源について、あてはまる製薬企業をすべてお選びください。」にて、「MR(面談)」に「該当企業はない」と回答した医師を「MR未リーチ医師」と定義。
結果サマリ MR未リーチ医師の新薬の情報収集・採用検討タイミング
専門領域の新薬に関する情報収集・採用検討タイミングを下記3パターンに分類※2しました。
● パターン(1) 販売前に情報収集と採用検討を行う医師
● パターン(2) 販売前に情報収集はするが、販売後に採用検討を行う医師
● パターン(3) 販売後に情報収集と採用検討を行う医師
- ※2 設問「専門領域の新薬に関する情報収集や採用のタイミングについて、最もあてはまるものをそれぞれ1つずつお選びください。」の回答を集計。「自ら積極的に情報収集するタイミング」で「薬剤の販売後」を選択し、「採用を検討するタイミング」で「薬剤の販売前」と回答した医師は、集計対象から除外。
MR未リーチ医師の新薬の情報収集・採用検討タイミングは、「新薬販売後」が77.3%と最も多い結果となりました。
結果サマリ MR未リーチ医師の、新薬の情報収集・採用検討タイミング別メディアマインドシェア※3
各パターン別のメディアマインドシェアを集計したところ、すべてのパターンの医師で、インターネットサイトが1位、インターネット講演会が2位となりました。
3位は、「(1)販売前に情報収集と採用検討を行う医師」、「(2)販売前に情報収集はするが、販売後に採用検討を行う医師」は学会誌、「(3)販売後に情報収集と採用検討を行う医師」は先輩・同僚の医師仲間でした。また、「(1)販売前に情報収集と採用検討を行う医師」ではMR(面談、電話)も10%を超えています。
上記表はこちらよりダウンロードいただけます。
- ※3 設問「先生が疾患・薬剤情報を得る際に活用する媒体をお教えください。」にて全体を100%とした際の各メディアが占める割合(%)の全体平均。メディアマインドシェアはこちらもご参照ください。
ラボ編集部からのコメント
MRと定期的に会っていない「MR未リーチ」医師2名へのインタビューから導き出した「MR未リーチ医師は、薬剤の発売前に情報収集し、発売時に採用決定の可否が決まっているケースが多いのでは?」という仮説に該当する医師は、少数派であることが明らかになりました。また、MR未リーチ医師の半数以上は、新薬の販売開始以降に薬剤の情報収集・採用検討を行っていることが分かりました。
先立って実施した医師2名へのインタビュー結果と、今回のメディアマインドシェアの集計結果から明らかになったのは、「(1)販売前に情報収集と採用検討をする医師」は、下記のような形でチャネルを使い分けて情報収集・採用検討を行っていると考えられる点です。
● 学会や論文、インターネットサイトから新薬の臨床試験段階での薬剤情報を入手する。
● MR、インターネット講演会から、副作用や、他施設の使用状況、自分で調べて分からなかった情報を入手する※4。
- ※4 「(1)販売前に情報収集と採用検討をする医師」も、販売後も継続して情報収集している(医師インタビュー:「MR未リーチ医師の、疾患・薬剤情報収集方法‐大学病院勤務医師編‐」 「MR未リーチ医師の、疾患・薬剤情報収集方法‐公立病院 勤務医師編‐」)
次に、「(2)販売前に情報収集はするが、販売後に採用検討をする医師」、「(3)販売後に情報収集と採用検討をする医師」について考察します。
両医師群ともインターネットサイト活用度は「(1)販売前に情報収集と採用検討をする医師」と同様に高い状況でした。ただし、パターン(1)の医師は、「薬剤発売前にインターネットサイト経由で論文等を確認し、新薬の情報を収集している※5」と考えられることから、パターン(2)、(3)の医師は、パターン(1)の医師とインターネットサイトの活用方法が異なると考えられます。
また、新薬情報を早い段階から公開できる、学会、学会誌、医療系雑誌・新聞などのチャネル活用度は、パターン(1)>パターン(2)>パターン(3)の順に高い結果でした。製薬企業では情報提供ができない時期から新薬の情報を入手したいというニーズを背景にした結果ではないでしょうか。
加えて、実臨床上の情報が入手できる、インターネット講演会、先輩・同僚の医師仲間、薬剤師などのチャネル活用度はパターン(3)>パターン(2)>パターン(1)の順でした。
上記のことから、パターン(1)の医師とパターン(2)、(3)の医師では、インターネットサイト以外のチャネルについても活用方法が異なる可能性が高いと考えられます
- ※5 「MR未リーチ医師の、疾患・薬剤情報収集方法‐大学病院勤務医師編‐」「MR未リーチ医師の、疾患・薬剤情報収集方法‐公立病院 勤務医師編‐」
今後明らかにすること
今後は、今回の調査で多数派であることが判明した「(3)販売後に情報収集と採用検討をする医師」と、次に多い「(2)販売前に情報収集はするが、販売後に採用検討をする医師」へのインタビューを通じて、MR未リーチ医師のチャネル活用の実態をさらに調査していきます。
本記事で掲載しているグラフはこちらより、ダウンロードいただけます。
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出典
DM白書2024年夏号(ラボ限定設問)
調査期間:2024年4月12日~4月19日
調査方法:インターネット
有効サンプル数:医師5,079名
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