医師の新規薬剤の「処方における検討度合い」を調査 製薬企業の情報提供最適化ポイント Vol.2
DM白書ラボはこれまで新薬における処方検討段階ごとの利用チャネル、必要な情報について定性・定量調査を行ってきました。本調査では、新薬処方における検討度合いを、不動産購入や海外旅行といった日常における検討度合いに置き換えて医師に回答いただきました。「DM白書2025年秋号」(n=5,145名)の回答を対象にしています。
※本記事内の図表のダウンロードおよび、医師の施設形態、診療科などでデータ分析可能な「データ分析機能」が利用できます。
なお、「医師の新規薬剤の処方における検討度合いを調査 情報提供の最適化ポイント Vol.1」※1では、「最も専門とする領域」での集計結果をご紹介していますので合わせてご覧ください。
DM白書ラボでは、医師インタビューと定量調査を通じて新規薬剤の処方検討段階ごとの利用チャネルや必要な情報を明らかにしてきました。調査を進める中で、限られた時間で効率的に情報収集を行いたいという医師ニーズが見えると同時に、医師によって処方検討の深さが異なっているという実態が分かってきています。
本調査では、専門領域における新薬の処方検討の度合いを、不動産、高級車、海外旅行、高級レストラン、家族へのプレゼントの5段階に分けた場合、どのレベルが近いのかを選択いただき、医師の「処方における検討度合い」について定量化を行いました。(Vol.1)
Vol.2では、処方における検討度合いによってチャネルの利用方法や情報収集時間にも差があるのでは?という仮説のもと、チャネルマインドシェア、情報収集時間、処方行動が変化した薬剤の情報入手先(PI)についての深堀調査結果をご紹介します。
目次
調査概要
-
● 設問
先生の専門領域において新規薬剤を初めて処方する際、どの程度検討されますか。
以下の、日常生活における検討レベルの中から最も近いものをお選びください。(SA)
1.不動産:長期的な影響を考慮し、時間を掛けてじっくりと比較検討
2.高級車:性能や投資対効果を慎重に評価し、複数の選択肢から検討
3.海外旅行:ベネフィットやコストパフォーマンスを考慮し、可能な限り情報を収集して検討
4.高級レストラン:妥協せずに検討するが、検討時間は上記1〜3ほどではない
5.家族へのプレゼント:限られた選択肢から、相手に最も合うと思われるものを選択
【再掲】医師の新規薬剤「処方における検討度合い」は「海外旅行レベル」(ベネフィットやコストパフォーマンスを考慮し、可能な限り情報を収集して検討)が28.7%
専門領域において新規薬剤を初めて処方する場合の、処方における検討度合いを集計しました。処方における検討度合いの詳細は下記表を参照ください。
「3.海外旅行(ベネフィットやコストパフォーマンスを考慮し、可能な限り情報を収集して検討)」28.7%、「5.家族へのプレゼント(限られた選択肢から、相手に最も合うと思われるものを選択)」25.3%、「4.高級レストラン(妥協せずに検討するが、検討時間は上記1〜3ほどではない)」21.1%が選択されました。
「処方における検討度合い」別のチャネルマインドシェアに大きな差はなし
処方における検討度合い別にチャネルマインドシェア※2を集計しました。
「処方における検討度合い」別のチャネルマインドシェアに大きな差は見られませんでした。
- ※2 「DM白書」で調査している、チャネルごとの接触時間や影響度を測るための指標。医師が疾患・薬剤情報を得る際に活用するチャネル(媒体)について、全体を100%とした際に各メディアが占める割合を指す。「メディアマインドシェアの活用」も参照ください。
処方における検討度合いが高額帯であるほど情報収集時間が長い。「不動産」と「家族へのプレゼント」で週80分の差
処方における検討度合い別に1週間に情報提供を受けるチャネル別時間※3を集計しました。
検討度合い別の1週間あたりの情報収集時間は、多い順に以下となり、「1. 不動産」と「5. 家族へのプレゼント」では、1週間の情報収集時間に約80分の差があることがわかりました。
- ● 1. 不動産:8時間30分/週
- ● 2. 高級車:8時間23分/週
- ● 3. 海外旅行:7時間49分/週
- ● 4. 高級レストラン:7時間23分/週
- ● 5. 家族へのプレゼント:7時間9分/週
チャネル別では、紙媒体での情報収集時間で「1.不動産」1時間38分、「5.家族へのプレゼント」1時間6分と、30分以上の差があり、もっとも差が開いた結果でした。
- ※3設問 「各媒体から疾患・薬剤情報について、1週間に何時間ぐらい情報提供を受けていますか。平均的な時間をお教えください」を集計
処方決定の決め手はMRとWeb講演会。処方における検討度合いによる情報入手先に大きな差はない
新規薬剤の「処方における検討度合い」別に処方行動が変化した薬剤情報入手先(PI※4)と、決め手となった薬剤の情報入手先を集計しました。
処方行動が変化した薬剤の情報入手先(PI)はMR(面談・電話)が最も多く、処方における検討度合い別では家族へのプレゼント(48.3%)、海外旅行(46.6%)、不動産(41.9%)の順となりました。
-
※4プロモーション効果を推計するMCI DIGITAL独自の指標で、プロモーションにより処方行動が変化した薬剤の回答率を指します。
「処方インパクト(PI)の活用」も合わせてご確認ください。
処方の決め手となった薬剤の情報入手先(PI)はMRが多く、処方における検討度合い「3.海外旅行」を選択した医師群では「MR(面談・電話)」32.7%、「講演会(インターネット視聴)」19.2%、「製薬企業の医療関係者向けウェブサイト」7.6%の順に多い結果でした。
また、「5.家族へのプレゼント」を選択した医師群では、「MR(面談・電話)」37.8%、「講演会(インターネット視聴)」18.0%、「m3.com」9.0%の順でした。
医師属性ごとの調査データ
血液内科医は、処方における検討度合い「海外旅行」を選択する医師が最も多く、この層はMRのチャネルマインドシェアが最多という結果となりました。
一方で「不動産」を選択した層は「講演会」、「m3.com」がほかの検討度合いを選択した層と比較して高い数値となっています。医師属性と処方検討度合いによって、処方影響を及ぼすチャネルが変わってくると言えるでしょう。
詳細は「データ分析機能を使う」ボタンからご確認ください。
1分でわかる!「データ分析機能」のご紹介
製薬企業は処方における検討度合いに応じた情報提供設計が必要 短時間での情報取得と深い検討の両立がカギ
処方における検討度合いの深堀調査では、チャネルマインドシェアや薬剤の情報入手先(PI)では大きな差異は見られませんでしたが、情報収集時間では検討度合いが高額帯であるほど時間が長いことが明らかになりました。情報収集時間の差は、特に紙媒体で差が顕著に現れています。
また、処方の決め手となった薬剤の情報入手先(PI)は、「MR(面談・電話)」「講演会(インターネット視聴)」「製薬企業の医療関係者向けウェブサイト」または「m3.com」が選択されています。主要なチャネルでは、医師の処方決定につながる情報を短時間で得られる顧客体験を設計する必要があります。
同時に、「1. 不動産」(長期的な影響を考慮し、時間を掛けてじっくりと比較検討)レベルでの処方検討を行う医師へは、じっくりと検討できる情報を提供する、「5.家族へのプレゼント」(限られた選択肢から、相手に最も合うと思われるものを選択)レベルでの処方検討を行う医師には、短時間での決定を可能にする情報提供を行う、といったように、医師の処方における検討度合いに合わせた情報提供を行うことも、処方決定の現場では重要な要素と言えます。
今後明らかにしていくこと
本調査では処方における検討度合いの濃淡はあっても、チャネル選択に差異がないことが明らかになりました。今後は、チャネルをまたいだ情報収集において、どのチャネルで何の情報を確認しているのかを定量調査によって明らかにしていく予定です。(2026年公開予定)
(文:松原、集計:福崎)
出典
DM白書2025年秋号(ラボ限定設問)
調査期間:2025年7月15日~7月28日
調査方法:インターネット
有効サンプル数:医師5,145名







