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インターネット講演会を起点にしたオムニチャネルマーケティングの進展状況

記事公開日 2024.02.14
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記事公開日 2024.02.14

DM白書では、これまで医師の薬剤情報取得の実態に関する調査を行ってきました。本レポートでは、製薬企業の主要チャネルであるMR、インターネット講演会、インターネットサイトの3つのチャネルに焦点を当て、オムニチャネルマーケティングの進展状況についてDM白書2023年冬号の調査結果とその解説を行います。さらに、インターネット講演会を起点としたオムニチャネルマーケティングの具体例もご紹介します。

目次

オムニチャネルマーケティングとは

オムニチャネルマーケティングは、複数の情報提供チャネルを統合し、顧客に一貫性のあるブランド体験を提供するマーケティング戦略です。顧客が自由に自分の好きなチャネルを通じて企業からの情報を得られるようにすることを目的としています。

調査設計

医師が最初に接触するチャネル(ファースト・タッチ・チャネル)としてインターネット講演会を設定し、最初に接触したチャネルで得た内容を確認するためのチャネル(アトリビューション・チャネル)をMRとインターネットサイト※1の2つに分類しました。

DM白書2023年冬号では、インターネット講演会から情報を入手した後、他チャネルから情報を取得した割合を経験率として計測し、さらにその経験が処方判断にどの程度役立ったかを調査しています。

インターネット講演会を起点にしたチャネル連携

※1 インターネット講演会の配信チャネルによって、連携先が医療系ポータルサイトと製薬企業ウェブサイトの両方が想定されるため、両者を包含してインターネットサイトと設定

オムニチャネルでの情報取得経験率と処方判断への役立ち率

オムニチャネルでのディテール経験率と処方判断への役立ち率

医師全体の傾向として、インターネット講演会後にMRから情報取得した経験率が56.1%、インターネットサイトから情報取得した経験率が49.1%となり、MRから情報取得した経験率が、インターネットサイトから情報取得した経験率より7ポイント高い結果となりました。

この経験により、両パターンともに約90%の医師が「処方判断に役に立った」と回答しています。

オムニチャネルによる情報取得経験率(企業別)

企業別オムニチャネルでのディテール経験率の推移(TOP15社)

DM白書2023年冬号にて企業別の情報取得経験率を確認した結果、アトリビューションチャネルがMRの場合、インターネットサイトの場合いずれもTOP10企業間は約3ポイント程度の差で拮抗していることが明らかになりました。

DM白書2023年夏号との比較では、アトリビューションチャネルがインターネットサイトの経験率が、上位15社中11社が3ポイント以上増加(最大7ポイント)し、全体的に増加傾向であることが明らかになりました。

一方、アトリビューションチャネルがMRの場合、上位15社中7社のみ3ポイント以上増加した結果となり、経験率の増加にばらつきが見られました。

アトリビューションチャネルがインターネットサイトの場合とMRの場合で差異が生まれているのははぜでしょうか。これは、MRを取り巻く環境変化に対する取り組みの差に起因すると考えられます。

コロナ禍以降加速している医師の勤務先施設における面談完全アポイント制への移行や、働き方改革推進によるMRとの面談可能時間帯の縮小などの動きが進み、MRを取り巻く環境は大きく変化しており、MRがインターネット講演会の配信時期に合わせて、タイムリーに対面で情報提供を行うといった従来のディテーリングが展開し辛い状況になっています。

リアルタイムでの対面での情報提供がしづらくなっている状況を踏まえ、MRからのメールを活用したディテールチャネル強化への取り組みの差が、アトリビューションチャネルがMRの場合の経験率に差が開き始めた要因の1つではないかと推察します。

インターネット講演会を起点としたオムニチャネル展開例

前述した状況を踏まえ、インターネット講演会を起点とした、アトリビューションチャネルが機能する取り組み事例を紹介します。

医療関係者向けのオウンドサイト内でのランディングページ(LP)の開設

● 視聴予約機能の搭載
● 開催日時のスケジュールのカレンダー登録機能の搭載
● 講演会でフォーカスする製品の解説ポイントを紹介したコンテンツ群の掲載

オウンドサイトのCMS化に伴い、インターネット講演会案内ページがテンプレート化され、CMS導入時に想定していなかったオムニチャネル的要素の取り込みが難しく、製品チーム毎の取り組みに差があるため、関連コンテンツの紹介までテンプレート化できないという声をたびたび聞きます。

本展開例は、オムニチャネル展開に積極的な製品のみ、標準化されたインターネット講演会案内ページとは別にLPを開設し、フリーテンプレートを使用して関連コンテンツ群の掲載を試行錯誤しながら強化するというアプローチです。

自社オウンドサイト会員向けのキャンペーンメールの配信

● 特定のインターネット講演会の告知を目的とするメール配信
● タイトルやメール内のメインエリアには、該当イベントの案内を掲載
● 上記LPと同様に具体的なアクションとして、視聴予約や開催日時のスケジュール登録のほかに、当該イベントでフォーカスする製品の解説ポイントを紹介したコンテンツ群へのアクセスを促す内容を掲載し、サイト内に設置されたLPとの一貫性を保持
● イベント当日の視聴ページURLを設置

MRからのメール案内用テンプレートの制作(MRmailやVeeva Approved email)

● 通常のバナー・フラグメントではなく、キャンペーンメールと同様の内容でテンプレートを用意
● LPやキャンペーンメールとの一貫性を保ちながら、イベント当日の導線を設置

サンクスメールの配信

● 講演会開催当日から3日以内程度での配信
● 期間限定ではオンデマンド配信が可能な場合、当日の視聴者だけでなく、事前に告知した対象者全員に配信し、録画視聴を促すことにも活用
● 上記の各施策内容と同様に、当該イベントでフォーカスする製品の解説ポイントを紹介したコンテンツ群へのリンクを掲載し、内容の一貫性を保持

インターネット講演会を起点とした取組について

本記事で紹介した事例のように、医師がインターネット講演会の関連情報にアクセスできる複数のチャネルを提供し、どのチャネルが最初の接点となっても、インターネットサイト内の関連コンテンツが紹介される一貫性のある顧客体験の提供に取り組まれる事例が増えています。

CMSやメールシステム等のシステム的な統合や改修は大掛かりになる傾向がありますが、既存のデジタルマーケティング環境の制約の中でも、運用でカバーできる部分から順次、オムニチャネル的発想にたったアプローチに取り組むことが望ましいでしょう。

弊社では、オムニチャネルマーケティングをテーマにした調査を継続し、現場での実践を通じた参考事例の提供に努めています。今回ご案内した事例の詳細について詳しく確認されたい場合は、弊社スタッフまでお気軽にお問い合わせください。

出典

DM白書2023年冬号
調査期間:2023年10月13日~10月20日
調査方法:インターネット
有効サンプル数:医師5,069名

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