【MR未リーチ/MR不要派】医師の声から探る、オムニチャネル活用と今後の情報提供の在り方 Vol.1 一般病院 勤務医編
取材年月:2025年7月
オムニチャネル化が進むなか、対面での情報提供を敬遠する医師たちは、どのようにして新薬や最新の医療情報を収集しているのでしょうか。本記事では、リウマチ・膠原病科のB先生にインタビューを実施。「MRに会わない理由」や、インターネットや医療系ポータルサイトを活用した情報収集の実態、さらにはMRや製薬企業に求める情報提供の在り方について、リアルな声を紹介します。
「MRと定期的に会っている理由、会っていない理由」※1では、定期的にMRと面談をしていない医師の25%が「MRは不要だから」と回答しました。
今回は「MR不要派」のB先生に、新薬情報の入手方法やMRに求めるもの、オムニチャネル時代の情報収集の実態について伺いました。
目次
- ● MRと面談していない理由:MRとのアポイントや関係構築が面倒で、会う必要性を感じておらず、自分のタイミングで情報収集したい。
- ● 情報収集活動の傾向:医療系ポータルサイトやSNSを活用し、必要な情報は自主的に短時間で効率よく収集。
- ● MR・製薬会社に求めること:無理に面談しようとせず、専門に合った情報を迅速かつシンプルに提供してほしい。
への関わり
MRと「会わない」理由は、自分のタイミングで情報を得られる方が気楽だから
MRに会わなくなった理由を教えてください。
医師になった当初から、MRと会うのは正直面倒だと感じていました。学生時代に病院の入り口でMRが医師を待っている様子を見て、「やりとりが煩雑そうだ」と思ったことも影響しているかもしれません。もともと人付き合いが得意ではないため、勉強会などもあまり参加していません。
今まで「また会いたい」と思ったMRもいませんでしたか?
いません。面談の予約があっても、診療や手技で忙しくなり忘れてしまったり、結局面倒に感じてしまうことが多いです。
MR以外での情報収集は十分にできていますか?
はい。自分のタイミングで情報を得られる方が、気が楽です。
MSL(メディカルサイエンスリエゾン)には会ったことがありますか?
存在は知っていますが、実際に会ったことはありません。学術的なディスカッションは興味がありますが、やはり会うこと自体が面倒です。
チャネル活用の実態:医療系ポータルサイト・医師ブログ・SNSが主役
B先生の、専門領域の新薬情報収集時の情報源の割合と、利用状況は下記のとおりです。
医療系ポータルサイトはどのように利用していますか?
m3の「MRくん」で新薬情報や適応拡大の情報を確認したり、専門医の解説動画で効果や副作用、実際の使用感について学んでいます。昼食中など、空いた時間にスマホで気軽にチェックしています。若手時代より今のほうが、利用頻度が増えてきています。
医師ブログやXの活用について教えてください。
他の先生のブログやXは、情報が簡潔で必要な内容にすぐたどり着けるため、自分から積極的に情報収集する際に活用しています。m3よりも必要な情報に辿り着きやすいです。
学会やWeb講演会、論文等はどう活用していますか?
学会やWeb講演会は情報収集の入口として利用します。その後、さらにインターネットや論文で知識を深めています。高名な先生の講演だけでは臨床応用が分かりにくいこともあるため、ネットで自分で調べることが多いです。
処方検討段階ごとの情報ニーズ:SNSも活用し幅広く情報収集
処方検討段階を(1)薬剤の情報を収集している(2)既存薬と比較検討している(3)数例の処方をしている(4)処方選択肢の一つとして処方している(5)(あるケースについては)最優先で処方している」の5段階に分け、それぞれの段階ごとの情報収集についてお話を伺いました。
処方検討段階ごとの情報収集の流れを教えてください。
薬剤の情報収集や既存薬との比較検討段階では、効果・安全性・作用機序、臨床試験結果、海外ガイドラインなどの情報を主にインターネット経由で入手します。
薬剤の承認前後で情報収集のタイミングは変わりますか?
承認前から情報収集することもあれば、承認後から行うこともあります。特に専門領域の薬剤では海外での承認状況や「もうすぐ日本で承認される」という情報をネットや医師ブログ・Xから積極的に集めています。
「数例処方」段階では?
この段階ではガイドラインを主に参照します。ガイドラインが改訂されていない場合は、先輩や同僚の実体験も参考にします。
「既存薬と比較検討」から「数例処方」へ移行する際に重視する情報は何ですか?
効果や安全性の情報を重視します。
海外でファーストチョイスとなっている薬剤は、効果や安全性が確立されていると考え、日本で承認され次第積極的に使うこともあります。また、海外ガイドラインをまとめた医師のブログやXも参考にしています。
「処方選択肢の1つとして処方」「最優先処方」段階では?
「数例処方」と同じですが、段階が進むにつれてガイドラインの比重が大きくなります。
Web講演会や論文はどの段階で利用されますか?
Web講演会はどの段階でも情報収集の入口として有用です。視聴後にガイドラインや論文を改めて確認しています。Xで話題の論文も、まずSNSで知り、その後自分で原著を読むという流れです。
MRから論文などを提供された場合、面談メリットを感じますか?
会いたいとまでは思いません。論文を持ってきてもらえるのはありがたいですが、Xなどからも十分情報が得られるので、MRに会う必然性は感じません。やはり、面談のアポ取りや人間関係の構築自体が手間に感じます。
MRへの期待事項は「自分の専門や興味に合った情報を提供してくれること」
「MR活動への期待事項」を医師にアンケート調査を行った結果※2についてお話を伺いました。
それぞれの事項についてMRに頼みたいと思う項目はありますか?
正直なところ、特にありません。挙げるとすれば「自分の専門や興味に合った情報を提供してくれること」でしょうか。また、「他施設での処方状況」なども情報としては興味がありますが、X(旧Twitter)などで他の医師の処方実態が分かるため、必ずしもMRから知りたいとは思いません。
オムニチャネル時代の医師がMRや製薬企業に求めるものとは
このようなMRなら会いたい、という理想像はありますか?
特に思い浮かびません。やはり「会う」となるとハードルが高くなりますし、面倒に感じてしまいます。もしどうしても希望を挙げるなら、わたしが欲しい論文などを迅速に郵送してくれるMRがいれば便利だと思います。情報だけをシンプルに提供してもらい、自分のタイミングでゆっくり確認できるスタイルが一番合っています。その点でも、m3の「MRくん」は非常に使い勝手が良いと感じています。
製薬企業に期待することはありますか?
これについても、特に要望はありません。無理に「会おう」とせず、必要な情報だけを郵送してもらえれば十分です。今は製薬企業に頼らなくても様々な情報が手に入る環境が整っているため、製薬企業に対して強く期待する点が少ないのだと思います。
製薬企業サイトでチャットだけのやり取りができるとしたらいかがですか?
チャットだけで完結するなら構いませんが、結局「今度お会いしましょう」となるのでは、面倒に感じてしまいます。チャットもAI対応で十分だと思いますし、会おうとしなければ気軽に利用できると思います。
ラボ編集部より:オムニチャネル戦略で医師の情報ニーズに応えるためには?
B先生の声から明らかになったのは、「MRとアポイントを調整したり、関係性を構築すること自体が面倒」という本音です。必要な情報を郵送してくれるのであればありがたいものの、自分でインターネットサイトや医療系ポータルを利用して調べたほうが早く、空いた時間にじっくりと情報を確認したいというニーズが強いことが分かりました。実際、m3経由で薬剤情報や動画解説を日常的に活用しているとのことです。
今後、医師の情報収集環境をより良いものにするためには、「必要な情報を短時間で入手できる環境作り」が不可欠です。また、医師同士の情報交換(D to D)を促進するような施策も、実効性の高いオムニチャネル戦略となるでしょう。
今後解決すべきことは?
MR面談を不要と考える医師の情報収集実態やニーズは施設形態や診療科によっても異なると考えられます。次回は、一般病院精神科の医師へのインタビュー内容をご紹介します。(2025年11月公開予定)
(文・松原)
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