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お役立ち度・リーチ率を向上させた、『Web講演会チャネル』強化事例~Meiji Seika ファルマ株式会社~
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今回は、Meiji Seika ファルマ株式会社のマーケティング・エクセレンス部のおふたりに「Web講演会」をテーマにインタビューを行いました。
Meiji Seika ファルマの「Web講演会」は、DM白書のリーチ率、お役立ち度が2020年以降上昇しており、具体的にどのような取り組みをされたのかお伺いしています。
取材年月 2024年9月
目次
【インタビュー企業紹介】
Meiji Seika ファルマ株式会社
マーケティング・エクセレンス部
部長 出口 雄一 様
デジタルマーケティンググループ長 西岡 正敏 様
※所属・役職等は取材時点のものです。
マーケティング・エクセレンス部
部長 出口 雄一 様
デジタルマーケティンググループ長 西岡 正敏 様
※所属・役職等は取材時点のものです。
マーケティング・エクセレンス部の役割紹介
マーケティング・エクセレンス部の役割を教えていただけますでしょうか。
出口様 |
マーケティング・エクセレンス部は、さまざまな環境変化に対応できるよう、2024年7月に新たに発足した部署です。3つのグループ(データマーケティンググループ、デジタルマーケティンググループ、メディカルエデュケーショングループ)で構成されており、プロダクトマーケティング部門や営業推進部と連携し、活動しています。 本日ご紹介するWeb講演会の取り組みは、デジタルマーケティンググループ(以下、デジタルマーケティングG)が中心となって強化してきました。 |
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Web講演会開催に関する社内体制、役割分担
Web講演会開催にあたっての社内の役割分担と体制について教えてください。
西岡様 |
プロダクトマーケティング部門が、Web講演会の企画や演者選定など、Web講演会の企画に関する役割を担っています。 一方で、デジタルマーケティングGでは、プロダクトマーケティング部門が企画するWeb講演会を効率的に医師に届けるために、オウンドサイトと3rdPartyの活用方法のプロダクトマーケティング部門への提案や、施策の実行を担っています。 また、MRがWeb講演会を有効活用できるような環境を用意し、MRにWeb講演会情報を周知しています。 |
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どの3rdPartyを使うかはプロダクトマーケティング部門が決めるのでしょうか?
西岡様 | 基本的にはプロダクトマーケティング部門が決めています。デジタルマーケティングGでは、3rdPartyに関するデータを蓄積して、どの3rdPartyを活用すべきかアドバイスしています。 |
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出口様 | 講演内容をどの顧客層に届けたいかという部分に関しては、プロダクトマーケティング部門とデジタルマーケティングGとで協議しながら、最適なチャネルを選択するかたちです。 |
Web講演会の効果を高めるための具体的な取り組み
DM白書のチャネルの評価指標であるリーチ率とお役立ち度では、貴社のWeb講演会に対する評価は2020年以降右肩上がりとなっています。この成果に至った取り組みをお聞かせください。
西岡様 |
まずWeb講演会の内容自体が医師にとって有益であることが大切だと考えています。この点は、プロダクトマーケティング部門が医師にとって有益な講演会を企画してくれているおかげで、お役立ち度向上に直結していると考えています。 その上で、デジタルマーケティングGでは、より多くの医師にWeb講演会を視聴いただき、その効果を高めるための活動をしています。具体的には、Web講演会の視聴者数を増やすための環境整備、Web講演会視聴環境のユーザビリティ改善、MRのWeb講演会と連動した活動のサポートを行っています。 これらの活動が相乗効果を生み出し、お役立ち度向上、リーチ率拡大にも繋がったと考えています。 |
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Web講演会の視聴者数を増やすという部分に関して、詳しくお聞かせください。
西岡様 |
Web講演会の視聴者数を増やすことにつながった取り組みとして、動画配信ツールの変遷についてお話します。 コロナ禍以前、講演会と言えば、リアルの講演会かWeb講演会が主流で、Web講演会は動画配信業者を利用して開催することが多かったと思います。弊社のWeb講演会の開催数は他社と比較して少なく、外部データでも良い成果が出ていませんでした。 コロナ禍になり、リアルの講演会が開催できなくなったため、Web講演会に注力していくことを考えました。ただ、これまでの動画配信業者に依頼してWeb講演会を開催すると、コスト面で大きな負担があったため、自社で開催できる方法を検討し、Zoom開催を導入しました。Zoomでの開催は業界的にも比較的早期に開始できたと思います。 ZoomによるWeb講演会を開催したところ、コロナ禍で止まっていた講演会が久しぶりに開催されたこともあり、MRからの告知のみで多くの医師に視聴いただきました。 多くの医師の視聴が期待でき、低コストで開催できるZoom開催は、コロナ禍でWeb講演会の開催数を増やしたいと考えていたプロダクトマーケティング部門の意向と合致したため、ZoomによるWeb講演会を増やす方針で進めることができました。 |
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その後も継続して多くの医師に視聴いただけたのでしょうか?
西岡様 |
いいえ、しばらくすると他社もWeb講演会を開催するようになり、弊社のWeb講演会視聴数は減少傾向となりました。 そこで、次の打ち手として、3rdParty経由での集客を検討しました。ZoomでのWeb講演会への集客について多くの3rdPartyに相談し、なんとか、協力が得られた業者もあり、当時としては業界初の「Zoom+3rdParty」というパッケージでWeb講演会を開催できることになりました。 「Zoom+3rdParty」のパッケージでWeb講演会を展開したところ、1回あたり200名ほどの医師に視聴いただけるようになりました。 そこで、安価で集客も可能なこのパッケージを基本として、さまざまな品目のWeb講演会で展開していくことにしました。 |
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Web講演会を視聴する医師のユーザビリティ向上に向けた取り組みついて詳しくお聞かせください。
西岡様 |
動画配信ツール自体とオウンドサイトのユーザビリティの改善を行いました。 それにより、「Zoom+3rdParty」での視聴者数を増やすことはできました。しかしながら、「Zoomでの視聴は個人情報の入力を毎回求められるのが手間」という医師からの意見があり、Zoomのユーザビリティに課題を感じたため、新たな動画配信ツールを導入することにしました。 新たな動画配信ツールでは初回は会員登録が必要ですが、2回目以降はIDとパスワードだけでログインできるようになり、Zoom開催時に起きていた、毎回個人情報の入力を求められるという課題は解消できたと思います。 実際に、この変更後にWeb講演会を視聴した医師に実施したアンケートでは、8割ほどの医師から満足の声をいただいています。 |
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動画配信ツールを切り替えたことで、得られたメリットは他にありますか?
西岡様 | Zoomへの集客がNGだった3rdPartyも、このツールへの集客はできるようになり、媒体選択の幅が広がりました。視聴データを分析すると、医師ごとに好みの3rdPartyがあることもわかったので、3rdPartyの選択肢を広げられたことも視聴者数の増加に寄与していると考えています。 |
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オウンドサイトのユーザビリティ向上に向けた取り組みについて教えていただけますでしょうか。
西岡様 |
弊社のオウンドサイトは会員制サイトのため、会員登録していない医師はWeb講演会の情報を確認できず、主なアクセスルートはMRからの案内メールでした。そのため、MRがリーチできていない医師には、オウンドサイト上で告知しているWeb講演会の情報が提供できていない状態でした。 そこで、オウンドサイトをリニューアルし、会員登録していなくても閲覧できるWeb講演会の開催カレンダーを用意しました。これにより、MRがリーチできていない医師の視聴に繋がっただけでなく、MRが紙媒体のみでWeb講演会を案内していた医師も、オウンドサイト上で簡単にWeb講演会の開催情報を確認できるようになりました。 |
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MRへはどのようなサポートを行ったのでしょうか?
西岡様 |
まずは、MRがWeb講演会の情報を確認しやすい環境を提供しました。これまでもWeb講演会の情報を確認できる環境はありましたけど、MRが様々な情報の中からWeb講演会の情報を探す必要があり、検索性がよくありませんでした。 そこで、MRが日常的に利用しているツール内でWeb講演会の情報を確認できるようにしました。浸透するまでには2~3ヵ月かかりましたが、利用するMRは大幅に増え、今では利用が当たり前のツールとなっています。 次に、MRがWeb講演会を視聴した医師に、早めにフォローすることの重要性が外部データでも示されていたので、プロダクトマーケティング部門にWeb講演会後のフォロー用スクリプトを用意してもらい、MRに提供しました。これがMRから好評で、「Web講演会案内時のスクリプトも欲しい」というMRからの要望もあったため、現在は、こちらもMRに提供しています。 MRからは、「Web講演会前後のトークスクリプトを用意してもらったので助かっている」という声も多く、うまくいっているのではないでしょうか。 また、Web講演会の視聴前後にフォローを実施した医師は、実施していない医師に比べてメッセージの浸透度が違うと思いますし、結果として、Web講演会の質の向上につながったのではないでしょうか。 |
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Web講演会後、MRからのフォロー活動の実行力を高めるために、どのようなことを行ったのでしょうか?
西岡様 | Web講演会後のフォロー活動を1週間以内に行うことをKPIに設定し、1週間以内のフォローが4~5割から7~8割に増加しました。 |
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出口様 | KPIに設定した背景は、Web講演会後のMRによるフォロー活動が、処方に好影響を及ぼすことが弊社のデータで明らかになっていたためです。KPIに設定することによってMRの行動を促し、データを基にKPIの進捗管理を行い、行動の結果として得られた効果をデータで提示していくことで、MRの基本行動として定着を図ることができました。 |
Web講演会チャネルの強化について
Web講演会で蓄積したデータ活用についてお聞かせください
西岡様 |
現状は、Web講演会を「見た・見ていない」のゼロイチでしか判断していません。しかし、実際には「何分以上視聴した」「Web講演会の間ずっと視聴していたのか」「どの媒体で視聴したのか」といった医師の視聴状況を分析する必要があると考えていて、方法については模索している段階です。 医師の視聴状況を分析することができれば、例えば、どのように視聴しているかで、フォローする医師の優先順位をつけるといったことも可能になるのではと考えています。 |
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医師がWeb講演会を視聴した事実だけでなく、視聴する際の質が重要ということでしょうか?
西岡様 | はい。3rdPartyのポイント目的で視聴した場合よりも、MRが案内して視聴した場合の方が視聴の質は高いはずです。実際にMCI社のDM白書にも「3rdPartyよりもオウンドサイトの方が処方への影響度が1.5倍ほど高い」というデータがあります。 |
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Web講演会の質を高めるためには、オウンドサイト経由の視聴を増やすことも重要でしょうか?
西岡様 |
はい。製薬企業としては、オウンドサイトを利用してくれる医師を増やしていかなければならないと考えています。医師の視点に立った場合、3rdParty上でのWeb講演会ではWeb講演会による情報取得に留まりますが、オウンドサイトであればWeb講演会の関連情報も取得できますし、関連した製品情報も取得できます。 製薬企業の視点に立った場合でも、Web講演会の視聴ログだけでなく、コンテンツ閲覧ログなども一括で蓄積できるため、デジタルマーケティングをはじめ、プロダクトマーケティングやMR活動で活用することができます。 今後は、デジタルにおいても、MRが「SOV」から「SOV+SOM」への変化を求められたように、「SOV+SOM」へ変化していかなければならないと思います。デジタルの「SOM」をしっかりと測定・評価できるようにしていきたいですね。 |
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今までのお話から、Web講演会をより良くしていくためには、プロダクトマーケティング部門との連携が重要だと感じましたが、今後どのような取り組みが必要だと思いますか?
出口様 | 医師によってチャネルプリファレンスが異なるので、MRリーチ先だけでなく、MR未リーチ先へのデジタルアプローチについても、プロダクトマーケティング部門と連携して進めていくこと必要だと考えています。 |
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西岡様 |
今まで以上にプロダクトマーケティング部門との連携を強化する必要があると考えています。例えば、1回のWeb講演会の集客数を増やすだけであれば、3rdPartyで集客数を増やせばいいのですが、中長期的にはオウンドサイトでアプローチしていくことが重要だと考えています。 ただ、3rdPartyとオウンドサイトのメリット・デメリットをプロダクトマーケティング部門に伝えきれていない部分があり、今まで以上に密に連携を取っていければと思います。 |
Web講演会のチャネルの強化はどのように進めていくのが良いでしょうか?
西岡様 | Web講演会自体のチャネル強化については、グランドデザインを描いて進められるのが理想ですが、デジタル技術やサービスは日進月歩で、より良いサービスがリリースされるため、グランドデザインを描き切ることは難しいと感じています。そのため、ここは変わらないという基盤となる部分はウォーターフォール型で構築し、サービスの部分はアジャイル的に試していくのが良いと思っています。 |
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医師にとって、より良いWeb講演会のかたちはどのようなものだと思われますか?
西岡様 |
現在、弊社のオウンドサイトで最もアクセス数が多いのはWeb講演会のカレンダーですが、3rdPartyでWeb講演会のカレンダーを確認して、それでも情報が足りなければ弊社のオウンドサイトにアクセスするという医師もいました。 複数のサイトでWeb講演会の開催情報を確認するのは医師にとって不便だと思うので、実現は難しいかもしれませんが、全製薬企業のWeb講演会を一覧で確認することができるカレンダーがあると、医師目線では便利かもしれませんね。 |
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マーケティング・エクセレンス部としての今後の展望
マーケティング・エクセレンス部の皆様としての今後の展望をお聞かせください
出口様 |
私たちは、デジタルに使われるMRではなく、デジタルを使いこなすMRを育て、MRとデジタルの融合を目指しています。 この目標を達成するためにはデータの活用が不可欠です。そのため、部員にはデータをフラットな視点で読み解き、判断する力を高めてほしいと考えています。 例えば、部員にはMR経験者も多く、彼らは自身の経験から「医師に会う」ことを目的としてデジタル活用を考えてしまうこともありますが、これでは、常に変化する今現在の医師のニーズを十分に捉えているとは言えません。 今現在の医師のニーズに対応するためには、常に最新の情報を取り入れ、それをフラットな視点で理解・判断していくことが必要だと思っています。 この点については、他の製薬会社さんとも情報交換しながら進めていければと思います。 MR教育に目を向けると、MR不要論というものもありますが、これは、変化し続ける医師ニーズに対応できないMRが不要ということであり、MRが不要になるということでは決してありません。今現在の医師に必要とされるMR像を私たちが提示し、MRの成長をサポートできればと思います。 |
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出口様 |
私たちのマーケティング・エクセレンス部が発足した意義は、 (1)データ、(2)デジタル、(3)MR教育の3つの機能を集約し、収集した「データ」をフラットな視点で活用できる情報・知見に変えることで、「デジタル」をマーケティングに織り込むこと、今現在の医師に必要とされる「MRを育成」することの2点を実現し、MRとデジタルの融合を実現することです。 当然のことながら、自部門だけで実現できるものではありませんので、今後も他部門やMRと共に推進していければと思います。 |
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