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メディカルアフェアーズ部門サイトにおける医師の利用状況と評価Vol.3 大学病院 勤務医編

記事公開日 2025.09.22
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記事公開日 2025.09.22

取材年月:2025年5月

メディカルアフェアーズ(以下、MA)部門によるデジタルを通じた情報提供は、医師にどのように活用されているのでしょうか。本記事では、実際にMA部門のサイトを利用している医師に対し、MAサイトで得ている情報、閲覧している製薬企業のMAサイトごとの評価や要望、さらにMSLとの面談状況についてお話を伺いました。
その上で、MA部門における医師ニーズに沿ったデジタル活用の方向性について考察します。今回は、大学病院呼吸器内科に勤務されているY先生へのインタビュー内容をご紹介します。

背景・目的

現在、製薬企業MA部門のサイトは掲載内容やサイト構造ともにさまざまです。本インタビューでは、MA部門のサイトを利用している医師を対象に、サイトの利用状況や評価を具体的に伺い、今後のMA部門サイトの在り方を探ります。

目次

詳細
  • ● Y先生は、製薬企業の「メディカルアフェアーズ(MA)サイト」を主に新薬開発や臨床試験情報の収集に活用している
  • ● 臨床試験データは海外の臨床試験結果も含めて必要
  • ● 期待するコンテンツは「疾患解説や治療の導入となる動画コンテンツや治療全体に関わる論文」「学会共催セミナー アーカイブ」
  • ● MAサイトが提供する情報は、「情報の集約」「アクセス性の向上」など、利便性の面で課題がある
Y先生プロフィール
施設形態
大学病院
診療科
呼吸器内科
年代
40代
メディアマインドシェア
マルチメディア派
MA部門のサイト閲覧状況
製薬企業A社 3か月に1回程度
MSLとの面談状況
以前は面談していたが、直近の4~5年は面談していない

MAサイトは治験や新薬開発の情報収集目的で利用

よく閲覧するメディカルアフェアーズ部門のサイト(以下MAサイト)と利用目的について教えてください。

製薬企業A社のサイトで、開発中の薬剤の情報を確認しています。MAサイトとプロモーションサイトの両方を利用しています。MAサイトの情報は実臨床には直結するものではありませんが、薬剤の開発状況を把握したり、知識や専門性を高めるために活用しています。例えば将来の肺がんの治療戦略や、「肺がんの適応に向けた臨床試験が開始されている」、「新しい作用機序の薬剤が発売されそう」といった情報を確認しています。臨床試験のデザインまでは細かく見ませんが、内容自体はチェックしています。

MAサイトの利用開始時期と頻度について教えてください。

7~8年前から、3か月に1回程度利用しています。

MAサイトを知ったきっかけを教えてください。MRやMSLから案内があったのでしょうか?

MRから紹介されたと記憶しています。以前、新薬開発や治験に関わっていた際、「開発中の薬剤の情報を入手できるサイトがある」と案内されました。

MSLとは面談されていますか?

以前はMSLと面談していましたが、ここ4~5年は面談していません。

MAサイトへのアクセス方法を教えてください。

検索経由ではMAサイトへ簡単にたどり着けないので、ブラウザのお気に入りに登録してアクセスしています。プロモーションサイトは検索ですぐ見つかりますし、MAサイトからもアクセスできるため、お気に入り登録はしていません。

MAサイトを利用するタイミングはいつですか?

新しいレジメンが発表された際に、今後の開発プランや将来的な治療の見通しを立てたりするために利用します。製薬企業A社は肺がん領域で多様な薬剤を扱っており、多くの薬剤で幅広く適用をとっているため、MAサイトを利用する頻度が高いですね。

MAサイト上で疑問が生じた場合はどうしていますか?

MSLと連絡を取っていたときは直接質問していました。MAサイトのまとめをMSLが説明してくれたこともあります。以前は医師主導試験の検討する際に利用していましたが、最近では情報収集がメインになっています。不明な点があってもひっ迫した状況でもないので、情報が開示されていない場合は調べるのを諦めています。

プロモーションサイトも見ていらっしゃるということですが、プロモーションサイトや医療系ポータルサイトと使い分けていますか?

MAサイトは治験や新薬開発情報の収集に利用しています。
プロモーションサイトでは有害事象情報の収集や、臨床試験結果を動画で視聴することが多いですね。医療系ポータルサイトは、主にm3と日経メディカルOnlineでWeb講演会やショート動画を視聴するために利用しています。
医療系ポータルサイトでは、オピニオンリーダーの意見を踏まえた情報や、新規薬剤を処方する際に向いている患者像に関する情報などがあるので、参考にしています。製薬企業のプロモーションサイトに掲載されていない情報がある場所だと思っています。

MAサイトの情報が役に立っていると感じるのはどんな点ですか?

基礎研究も含めてワールドワイドに薬剤開発の情報が得られ、世界の肺がんに対する治療の方向性を知ることができるという点です。

MAサイトはプロモーションサイトよりも閲覧のハードルが高い

ここからは、普段Y先生がご覧になっているMAサイトを10点満点で評価していただきたいと思います。製薬企業A社のサイトはいかがでしょうか。

採点というのは難しいですね。

5点でしょうか。
改めて見てみると、MAサイトは誰向けのものなのかがよくわかりません。万人向けではないなという印象を受けています。MAサイトにどのような経緯でたどり着くのかにもよりますが、プロモーションサイトよりも閲覧のハードルは高いですよね。わたしが見ているMAサイトは、トップページのメニューが少なく使いづらいです。評価ポイントは「開発パイプライン」です。ただ、文字が小さく見づらいので本当に興味のある人しか閲覧しないのではないでしょうか。

MAサイトにあるQA検索は利用されたことはありますか?

QAは利用したことはありません。QAにはレスポンスしか載っていないようですね。プロモーションサイトの方が使いやすいと感じます。

製薬企業A
採点 5点
高評価ポイント 開発パイプラインの一覧性
低評価ポイント 誰向けのサイトなのか分からない
プロモーションサイトよりも閲覧のハードルが高い
トップページのメニューが少ないので使いづらい
文字が小さい

MAサイトの動画コンテンツや学会共催セミナーの情報は有用

では、普段先生がご覧になっていないMAサイトにあるコンテンツについてお話を伺いたいと思います。まず、動画での診療のコツや疫学調査結果など、薬剤プロモーションに限らない情報提供を行うサイトもあるのですが、どう思われますか?

薬剤に関してだけではなく、疾患全体に関する情報というところがいいと思います。導入は動画コンテンツの方がありがたいですね。

疾患全体や疫学などに関する論文を掲載してするサイトもありますが利用してみたいですか?

製薬企業が提供する論文は自社薬剤に関わるものばかりで、それ以外の論文は自分で調べるものと思っていましたので、薬剤に関わらない論文で、興味がある内容であれば利用したいですね。内容次第だと思います。

市販後臨床研究結果を一覧で掲載するサイトもありますがいかがでしょうか

確認したところ、国内の臨床試験情報が多い印象です。海外の情報もあるといいですね。自身の研究テーマが「既に行われているのか」を知りたいので、これはなくてもいいかなぁ。海外の臨床試験結果も含めて探せるサイトを確認すると思います。

学会共催セミナーの動画を掲載しているケースもありますがいかがでしょうか。

そんなところもあるんですね。とてもいいと思います。学会の共催セミナーを学会終了後も視聴できるのは非常に勉強になります。ぜひ各社で実施してほしいです。

発売後の情報は一箇所にまとめておいて欲しい

MAサイトに掲載してほしい情報はありますか?

疾患の捉え方に関する情報提供や、学会共催セミナーのアーカイブ動画掲載はぜひ実施して欲しいです。

テキストと動画はどちらが見やすいですか?

動画です。動画は論文などの文字情報と違って、疲れているときでも頭に残りやすく勉強になります。疾患の捉え方に関する情報や学会のアーカイブは、プロモーションサイトにあってもいいんじゃないかなぁ。

先生としては、MAサイト、プロモーションサイト、と別々の場所に置かれるよりも、情報は一ヵ所に集約されていた方使いやすいのでしょうか?

はい。開発中の情報は分けていただきたいですが、発売済み薬剤情報は同じ場所にまとめてほしいです。

専門外の医師への情報提供は必要でしょうか?

疾患の概念を簡潔にまとめた動画などがあれば、導入としては良いと思います。専門外領域では論文や臨床試験の羅列はハードルが高く、あまり見られないのではないでしょうか。

MAサイトからの情報提供について要望があればお聞かせください

正直なところ、MAサイトって誰向けに、何を目的に作られているのかがよくわからないです。
わたしとしては、MAサイトは新薬開発や臨床試験に関わっている医師向けなのではと捉えていましたが、サイトに手軽にアクセスできる感じでもないので、まずはサイトがもう少し探しやすくなるといいと思います。
「MAサイトを見る」ということが医療系ポータルや製薬企業サイトほど医師に浸透していないので、このサイトにだけ有用な情報が掲載されているのはもったいないですよ。
今のところプロモーションサイトの情報提供で十分満足できているため、MAサイトの改善についてはそこまで期待していません。

考察

ラボ編集部より

大学病院呼吸器内科勤務のY先生が、MAサイトを利用する主な目的は開発中の薬剤についてのエビデンス情報であり、臨床試験情報は海外の情報も含めた掲載を希望されていました。
また、期待されるMAサイトコンテンツとして高い評価があったのは下記でした。

  • ● 疾患解説など疾患治療全体の導入となる動画
  • ● 薬剤だけに限らず疾患に関わる全体的な論文情報
  • ● 学会共催セミナーのアーカイブ動画

MAサイトを実際に利用し、期待を寄せる医師であっても、他2名の医師同様※1、「MAサイトが何のためにあるのか分からない」「アクセスしづらい」「見づらい」といった声があり、製薬各社のサイト上での情報提供形態や内容のバラつきが、利用者である医師の混乱を招いていると考えられます。
MAサイトについては医師のニーズを明らかにしつつ、MA部門ができることの範囲内で最適な情報提供方法を検討していく必要があります。

今後

今後解決すべきことは?

医師がMAサイトに期待するコンテンツについて、インタビュー内容をもとに定量化していきます。
(文:松原)

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