医療系サードパーティの利用実態から見えた、オウンドサイトのUX改善点
医師の働き方改革により、医師の勤務先施設内での医療従事者間のタスクシフト等の取り組みが進行中です。これにより、多くの医師が自由時間を使って、薬剤や疾患に関する情報収集活動を増やす意向があることが明らかとなっています。特に注目すべきは、インターネットサイトやWeb講演会を中心としたデジタルチャネルの利用増加です。
インターネットでの情報収集がさらに増えるという動きが本格化する2024年4月に向けて、製薬企業側はどういった観点でUX改善に取り組む必要があるのでしょうか。
この点を探るため、最新号のDM白書2023年秋号では、約6年ぶりに、医師の医療系サードパーティの利用状況について特集を組んで調査を行いました。以下は、その主な結果です。
医療系サードパーティの利用率上昇
2017年の調査時と比べ、主要4サイト(m3, CareNet, Medpeer, 日経メディカル)で、ほぼ毎日の利用率が60%以上に大きく上昇しました。また、会員数トップのm3と、それ以外の3社との差も縮小していることが分かりました。
製薬企業提供のコンテンツ閲覧率も増加
主要4サイトでの製薬企業提供のコンテンツ閲覧率は70%前後あり、その中で、クリックした「製薬企業が提供する薬剤情報のコンテンツ」を処方の参考にした医師も約49%と高い数字を示しています。この点でも各サードパーティ間の差は縮小している状況でした。
製薬企業オウンドサイトへのアクセス
サードパーティで特定の薬剤情報を確認した後、2回に1回以上の頻度で詳細を製薬企業のオウンドサイトで確認する医師が、いずれも50%以上という結果も得られました。
これだけ医療系サードパーティ間での利用格差が埋まってきているということは、各社の薬剤情報を配信するサービスレベルの格差縮小や、それぞれに特色あるサービスを展開することによるアクティブユーザー層の増強が実現していると言えます。
1つのサードパーティだけに絞るのではなく、特定のサイトを軸にしつつ、限られたプロモーション予算枠にて、複数のサイトに分散して情報配信することで、リーチする医師の拡大を実現しましょう。
また、これらのデータを参考に、製薬企業のマーケティング担当者として、オウンドサイトのUX改善の明確な方向性が見えてきます。
オウンドサイトにおけるUX改善の方向性
どのサードパーティに情報配信することになったとしても、医師が特定の薬剤情報を取得した後、詳細確認のために製薬企業のオウンドサイトにアクセスするという大きな流れは、変わりありません。この医師のユーザー体験(UX)をスムーズにするため、オウンドサイト内の製品情報ページのメニュー構成やレイアウト構造、掲載コンテンツを見直し、最適化に努めることが不可欠です。
オウンドサイト上での集客施策のみで考えると、ほぼメールマガジンやMRからのメール経由での特定コンテンツへの直アクセスが中心のため、製品情報ページを見直すことの優先度は高くない、と判断しがちです。
ですが、医師自らが確認のために製薬企業のオウンドサイトへアクセスした際に、望んでいる情報が探しやすいかどうか、特にサードパーティで配信中のコンテンツに関連した情報が判りやすく配置できているかといった観点での最適化が今後重要と考えます。
2024年4月の医師の働き方改革関連規制の適用開始まで、半年を切りました。この時期に、医療系サードパーティからオウンドサイトへのオムニチャネル観点でのUX改善に取り組まれることをお勧めします。
出典
DM白書2023年秋号