製薬オムニチャネルマーケティングの情報提供Webサイト
課題を見つける 医師の声から 医師の本音 【MR未リーチ/MR必要時のみ面談希望派】医師の声から探る、オムニチャネル活用と今後の情報提供の在り方 Vol.2 一般病院 勤務医編

【MR未リーチ/MR必要時のみ面談希望派】医師の声から探る、オムニチャネル活用と今後の情報提供の在り方 Vol.2 一般病院 勤務医編

テーマ【MR未リーチ 必要時のみ面談希望派】への最適なオムニチャネル展開は?
検討フェーズ課題を見つける 
記事公開日 2025.12.09
お気に入り

取材年月:2025年7月

DM白書ラボの調査によると、MRと定期面談を行っていない医師でも「必要なときにはMRから情報を得たい」と考える医師が最も多い※1ことが判明しています。では、「MRからの情報が必要なとき」とは、具体的にいつ、どのような場合なのでしょうか。
本記事では、一般病院 血液内科のS先生に、情報収集の実態とMRに求める情報提供の在り方についてお話を伺いました。

背景・目的

「MRと定期的に会っている理由、会っていない理由」の調査※1では、定期的にMRと面談していない医師は全体の56%であり、そのうちの25%が「MRには必要に応じて会えればいい」と回答しました。
今回は「MR必要時のみ面談希望派」のS先生に、新薬情報の入手方法やMRに求めるもの、情報収集実態について詳しく伺いました。
同じテーマで大学病院精神科に勤務する医師へのインタビュー※2も紹介していますのであわせてご覧ください。

目次

詳細
  • ● 医療系ポータルサイトを起点とし、複数チャネルを利用した情報収集
  • ● 処方検討段階別の情報源は、前半はデジタル、後半は実処方経験とMRからのエリア情報を重視
  • ● MRが必要なときは、使用予定薬剤のデータが欲しいときや困った症例に出会ったとき
  • ● MRに望むことは過度な干渉をせず、連絡をしたときに迅速かつ的確に対応してもらえること
S先生プロフィール
施設形態
一般病院
診療科
血液内科
年代
40代
訪問規制情報
完全アポイント制
新薬の処方意向
広く一般に処方されてから検討
処方権限
最終決定の場に関与する立場

オムニチャネル活用実態:複数の情報源を効果的に使い分け

まず、S先生の専門領域における新薬情報収集の実態について伺いました。

【一般病院 血液内科 S先生】専門領域の新薬情報収集時の情報源の割合と、利用状況

医療系ポータルサイトはどのように利用していますか?

m3、日経メディカルOnline、CareNetを利用しています。血液疾患専門のHemato paseo(ヘマトパセオ)※3も利用しており、利用割合は全体の4分の1程度です。

これらのサイトでは、血液疾患をメインに疾患概要や新薬の臨床試験結果を確認し、一般内科の内容もチェックしています。Hemato paseo(ヘマトパセオ)では、KOL(キーオピニオンリーダー)の先生が専門的でニッチな論文情報を紹介してくれるのが気に入っています。

  • ※3 血液専門医と医療関係者のための情報サイト「ヘマトパセオ」https://hematopaseo.jp/

学会・学会誌の活用状況はどうでしょうか?

血液系学会にリアル参加しています。学会では、気になる疾患情報や臨床で困っている症例のヒントになる情報を収集したり、教育講演で知識整理や最新知見の習得をしたりしています。

学会誌は定期的に送られてきます。最新知見が網羅されているため、薬剤・治療の動向確認に活用しています。

Web講演会についてはいかがですか?

主に医療系ポータルサイトで視聴しています。製薬企業サイトはその会社の薬剤についての情報しかなく、医療系ポータルサイトの方がアクセスしやすいため、MRから依頼されたときにたまに見る程度です。

Web講演会では、疾患・薬剤情報、新薬の臨床試験結果、病理、症例報告、分子生物学的内容などの情報を得ています。

PubMedなどの、その他のインターネットサイトの利用状況を教えてください。

専門領域の情報収集にはPubMedを利用しています。希少疾患の情報は少ないため大学病院時代は、インターネット経由で海外文献や大学図書館にアクセスして情報を得ていました。

MRおよび院内説明会を利用した情報収集についても教えてください。

コロナ禍はリモートが多く、直接面談はあまりありませんでした。
現在は電話かメールでMRに連絡すると来てくれますが、勤務先では医師とMRの直接やりとりを推奨していないため、窓口責任者を通すことが多い状況です。

MRからは新薬紹介や臨床試験結果の情報提供を受け、こちらからは使用予定薬剤のデータや困った症例について「他施設での対処法」などの情報を得ています。MRには、困って情報が欲しいときに迅速対応してもらえれば十分で、現状には満足しています。

院内説明会は月2回程度、お昼に開催されていますが、血液内科だけが対象ではなく一般内科の先生も一緒なので、あまり参考になる内容ではありません。

MRに聞けないときはどのように情報収集していますか?

元医局の同僚に聞きます。同僚の方が手軽なので、そちらに聞くことの方が多いですね。

処方検討段階の前半はポータルサイト、後半は実処方経験を重視しての情報収集

処方検討段階を(1)薬剤の情報を収集している、(2)既存薬と比較検討している、(3)数例の処方をしている、(4)処方選択肢の一つとして処方している、(5)(あるケースについては)最優先で処方している、の5段階に分けていますが、違和感はありますか?

違和感はありませんが、(1)と(2)は同時並行です。また、(4)と(5)で必要な情報は同じです。

処方検討段階

「(1)情報収集」「(2)比較検討」段階で必要な情報はどのようなものでしょうか。また、情報収集は薬剤の承認前後のどのタイミングで開始することが多いですか?

興味のある薬剤は承認前から情報収集することが多いです。この段階で知りたいのは、薬剤基本情報(効果・安全性、作用機序)、論文、臨床試験結果、ガイドライン情報です。

承認前は、薬剤の優位性の話題を医療系ポータルサイトで確認することが多いです。承認後は医療系ポータルサイトで薬剤基本情報を把握したあとに、PubMedで原著論文、臨床試験結果を確認します。医療系ポータルサイトには効果・安全性・臨床試験結果が掲載されているので、詳細を論文で確認するという流れです。また、ガイドライン、疾患・治療の解説を行うWeb講演会を視聴することもあります。これは処方直前に見ることが多いですね。

Web講演会はMRから案内が来ることもありますか?

はい。ありますが、MRからのメールはアポイント以外スルーしています。

「(3)数例処方」段階ではいかがですか?

ここで必要な情報は、薬剤基本情報、適正使用ガイド、市販後調査結果、KOLによる解説動画、ガイドライン、疾患・治療の解説動画、エリアの処方状況です。

適正使用ガイドや市販後調査結果は紙媒体のほうが確認しやすいし、手元に置いておけばすぐ確認できるため、MRから提供してもらえると助かります。患者説明冊子もMRからいただけると助かります。

エリアの処方状況については、他施設での該当薬剤使用状況をMRに聞いています。

紙媒体での情報提供がない場合はどうしますか?

インターネットサイトで確認します。

「(4)処方選択肢の一つ」「(5)最優先処方」段階になると、情報収集の仕方は変わりますか?

この段階では自身の経験が重要なので、あまり情報収集しません。適用追加や副作用発現時に情報収集する程度です。

【一般病院 血液内科 S先生】処方検討段階ごとに必要な情報とチャネル

MRとの面談が必要なのは、使用予定薬剤のデータが欲しいときや困った症例に出会ったとき

先生は「必要時のみMRと面談希望」とのお考えですが、「必要なとき」は具体的にどんなときでしょうか。

使用予定薬剤のデータが欲しいときや困った症例に出会ったときで、前者の方が多いですね。困った症例については、MRに「他でもこういうことはない?」「他施設ではどう対処している?」ということを聞いています。エリアの処方状況は個人収集に限界があるため、MRからの情報が必要です。

逆に、必要がないときにMRと面談することはありますか?

ありません。
大学病院勤務時代はMRとの面談規制がなく、医局前で待っているMRと話すことはありましたが、現在は勤務先が完全アポイント制のため、そういった機会はありません。

現在もMRからのアプローチはちょこちょこあり、時間に余裕があればアポイントを受けています。たいてい有益な情報提供があり、面談して良かったと感じることが多いです。

必要なときにMRからタイムリーに情報提供がありますか?現在の満足度はいかがですか。

現状のMRからの情報提供で必要な情報は入手できており特に不満はありません。新薬発売時はMRから連絡があり、こちらからアプローチした場合もすぐ対応してくれています。

面識のあるMRは10社以上ですが、頻繁に会うのは2社程度です。

MRの担当変更もよくあるのではないでしょうか。それについて不満がありますか?

MRの担当変更はよくあることなので、あまり気にしていませんね。

もし勤務先がMRとの面談制限を設けていなければ、もう少し面談の機会を増やしたいと思われますか?

今がちょうどいいと思います。大学病院時代は忙しいときにMRの訪問があり、時間を取られて面倒だった経験があるためです。

MR面談への考え方は、先生のご経験年数や勤務先の変化によって変わるものでしょうか。

後期研修医の初期は臨床で手一杯なため、MRからの情報提供が有用と感じていたこともありましたが、経験を積むと自身で医療系ポータルサイトなどから情報収集できるようになり、MRからの情報が不要になってきた、ということはあると思います。

また、勤務先による変化はあると思います。わたしは、勤務先が変わり、診る疾患も変わったため、MRからの情報収集方法も変わりました。大学病院時代はMRから造血幹細胞移植関連の情報を得ていましたが、施設が変わりその疾患関連の情報入手をタイムリーに行う必要はなくなりました。

施設での薬剤採用権限が上がると、必要な情報は変わりますか?

必要な情報はそれほど変わらないと思います。

最後に、今後MRや製薬企業からの情報提供で希望されることがあれば教えてください。

必要な情報や知りたい情報があればこちらからアポイントを取ります。こちらへの過度な干渉をせず、連絡をしたときに迅速かつ的確に対応してもらえれば満足です。現状でも、MRは希望する対応をしてくれているので満足しています。

考察

ラボ編集部より:MR未リーチ/必要時のみ面談希望 医師の期待に応えるためには?

S先生は、医療系ポータルサイトを起点にインターネット上のさまざまなチャネルを組み合わせて情報収集を行っていました。
このことから、最新情報は医療系ポータルサイト、詳細な情報は製薬企業オウンドサイト、エリア情報や個別の症例に合わせた情報はMR、といった形でそれぞれのチャネル特性に合わせた情報提供を行っていくことが、情報の受け手の医師にとって利便性の高いものになると言えます。
オムニチャネル戦略においては、医師が必要な時に必要な情報にアクセスしやすい環境づくりに加えて、医師からの問い合わせへの素早い対応力が競争優位につながります。

今後

今後解決すべきことは?

「MR未リーチ/必要時のみ面談希望」医師2名に、情報収集の実態についてお話を伺いました。今後は、大規模調査を通じて「MRとの面談が必要なとき」はどんなときか?について明らかにしていきます。(2026年以降公開予定)
(文:松原)

お気に入りに登録

同じテーマの記事を見つける

閲覧中のテーマ
【MR未リーチ 必要時のみ面談希望派】への最適なオムニチャネル展開は?
検討フェーズ
課題を見つける
未読
2025.09.02
未読
2025.11.07
NEW
未読
2025.12.09
Page Top