製薬業界におけるChatGPTの効果的な活用方法【PR】
ChatGPTの優れた特性は、2022年11月頃から技術者の間で徐々に話題になり、年が明ける頃には世界中で高い関心を集めるようになりました。その後あらゆる業界で活用が進み、導入を知らせる製薬企業のニュースリリースも時折見受けられます。
その一方で、「ChatGPTは具体的に何ができるのか」「どのように活用すればいいのか分からない」「ChatGPTに社外秘の情報を学習されてしまうのでは」といった声も多く聞かれます。
本記事では、IT・AIソリューションを展開する木村情報技術が、製薬業界におけるChatGPTの具体的な活用方法と期待できる効果についてお届けします。
目次
どのようなプロンプトを作成するかが重要
ChatGPTは文書の作成や要約、アイデアの提案などで利用されています。製薬業界で最初に思いつくChatGPTの活用方法が論文の要約です。ブランドマネージャーが読むべき最新論文を探すため、加えてMRに論文内容を簡単に理解してもらうために論文要約は便利です。
ChatGPTに「要約して」といった単純なプロンプト(命令文)を与え要約した場合、必要とする情報が抜け落ちることがあります。試験デザイン、評価項目(Primary、Secondary)、有意差があったのか、副作用・有害事象はどのようなものがあったのか、は知っておきたいところです。これらの項目がしっかり入った要約文を作成するには、プロンプトを十分に検討することが必要です。ChatGPTを有効に活用するためには、このプロンプト作成が大変重要になります。
表1:要約例
「要約して」だけのプロンプトによる要約 | 木村情報技術作成のプロンプトによる要約 |
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この研究は、コライオン注射液がニクショク症候群の治療において有用であるかどうかを評価するために実施された臨床試験の結果を報告しています。コライオン注射液は、プラセボと比較して有望な治療法と考えられています。試験では、2,000人のニクショク症候群患者を対象に、コライオン注射液とプラセボの効果を比較し、血液Hp値を主要評価指標として使用しました。 試験結果によれば、コライオン注射液を受けた患者の血液Hp値が有意に改善されたことが示されました(P < 0.05 )。これは、コライオン注射液がニクショク症候群治療において有効である可能性を示唆しており、患者の治療選択肢として重要な情報を提供します。今後の臨床試験や長期のフォローアップ研究が必要ですが、コライオン注射液は有望な治療選択肢となる可能性が高いことが示されました。 |
本研究は、コライオン注射液の有効性を評価するための臨床試験結果を報告しています。試験は、2,000名のニクショク症候群患者を対象に行われました。参加者はランダムに2つのグループに分けられ、1つはコライオン注射液を投与し、もう1つはプラセボ(生理食塩水)を投与されました。評価基準として血液Hp値と体重が使用されました。結果として、コライオン注射液群の血液Hp値の平均値は、6.9 ± 0.23であり、プラセボ群の平均値は6.3 ± 0.51でした。有意差検定の結果、P値はP < 0.05となり、コライオン注射液群とプラセボ群との間に統計的に有意な差異がありました。これにより、コライオン注射液がニクショク症候群治療において有効であることが示されました(P < 0.05)。副作用については文献内容に記載がありませんでした。 |
次に、プロンプトを工夫することで製薬業界としてどのように活用できるかについて2つの例を紹介します。
ChatGPTでプロモーションコードを遵守させるMRロールプレイ
1つ目はChatGPTに医師役を演じてもらうMRロールプレイです。医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(以下、販売情報提供ガイドライン)の影響で、MRが話せる範囲をしっかり把握するためにロールプレイは大切です。
ロールプレイには相手が必要で、上司や同僚の時間を調整してもらわなければなりません。したがって、何回も相手役をお願いするのは気が引けるものです。ChatGPTなら、いつでもどこでも何回でもロールプレイの相手役をしてくれますので、気楽に実施できます。数をこなすことが出来るようになるので、MRのディテールの質の向上に寄与します。
MRが重要な試験データを適切・正確に提供するために
プロンプトを工夫することで、ChatGPTが演じる医師役にキャラクターを設定することが出来ます。がん専門の病院勤務医や一般的な開業医などの属性、治療方針や性格等を与えることで、様々なシーンのロールプレイが可能になります。更に製品情報も与えることで、MRがデータを正しく話すことができているかを評価することも可能になります。
評価は点数として出力しますので、MRの理解度を確認することも出来ます。ChatGPTとのロールプレイを通じて、MRは販売情報提供ガイドラインに抵触せず、重要な試験データを適切かつ正確に話せるように、いつでも何度でも練習することが可能です。
MRがオフラベル情報を適切・正確に提供するために
MRがオフラベル情報をHCPに提供する際に、厳格なルールを定めている製薬企業は多いと思います。ルールを逸脱しないように、MR研修は必須です。ChatGPTにそのルールを教えれば、MRがルールを逸脱した対応をしていないか、ロールプレイで評価することが出来ます。
表2:木村情報技術作成のプロンプトによるロールプレイ例
発言者 | 会話内容 |
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ChatGPT | 先日は説明会ありがとう。MOFMOF試験の患者背景と全生存期間のサブグループ解析のデータについて、もう一度詳しく教えてください。 |
User | はい、MOFMOF試験に組み入れられた患者のうち、XYZ阻害剤投与歴のある割合はコライオン群で30%、HAAGE化学療法群で15%でした。 |
ChatGPT | 承知しました。XYZ阻害剤の使用歴については、どのような影響が観察されましたでしょうか。 |
User | XYZ阻害剤の使用歴があった患者のOSは、コライオン群で約8か月、HAAGE化学療法群で約4ヶ月でした。OSは平均値です。 |
ChatGPT | 理解しました。では、特定の遺伝子変異についてのサブグループ解析の結果はいかがでしたでしょうか。特にABC-1変異とABC-2変異についての情報が気になります。 |
User | ABC-1変異のみを発現していた患者のOSは、コライオン群で約12ヵ月、HAAGE化学療法群で約6ヶ月でした。ABC-2変異のみを発現していた患者のOSは、コライオン群で約7ヵ月、HAAGE化学療法群で約2ヵ月でした。 |
ChatGPT | ありがとうございます。それは非常に参考になるデータです。何か他に追加の情報はありますでしょうか。 |
User | 情報は以上です。 |
ChatGPT |
承知いたしました。ありがとうございました。 #評価: ##科学的根拠判定基準: 評価:3 理由:提供されたデータは、製品データと一致していません。XYZ阻害剤投与歴のある患者の割合やOSのデータ、ABC-1、ABC-2変異についてのOSのデータがオリジナルのデータと異なりました。 ##客観的判定基準: 評価:7 理由:提供された情報は過度に強調されているわけではなく、不安を煽るような言い回しも使用されていません。誹謗中傷や個人的な見解も含まれていないため、この部分では問題はありませんでした。しかし、正確なデータが含まれていない点が評価を下げる要因となりました。 |
問合せ対応業務をChatGPTで効率化
2つ目は、ChatGPTを活用した問合せ対応業務の効率化です。コールセンターの問合せ業務は、どの製薬企業でも多忙を極めているという現状があります。そこでChatGPTを活用することにより、業務の効率化を推し進めることが可能です。
Q&Aの新規生成・更新を効率化
新薬の発売時には、限られた時間の中でQ&Aを作成・準備する必要があります。また、Q&Aを2年ごとに更新する作業にも手間がかかります。ここは少しでも効率化したい部分です。
一般的なQ&Aは、ChatGPTとAPI連携した木村情報技術のAIチャットボット「AI-Q(アイ・キュー)」で新規生成が可能になりました。
私たちはChatGPTを活用して、製薬業界特有のドキュメント(CTD、電子化された添付文書、インタビューフォーム等)からも、Q&Aの新規生成が可能になるよう研究・開発を進めています。ドキュメント毎にプロンプトを準備し、効率的にQ&Aを生成できる方法を模索しています。
Q&Aの更新作業については、先程の論文要約プロンプトを利用して、2年間に発表された新しい情報を差分データとしてQ&Aに追加することが出来ると考えています。
AIチャットボットの正答率向上
製薬業界においても、AIチャットボットの導入が一般的になってきました。一方で、製薬企業としては正確に情報を伝えるために正答率が気になるところです。AIチャットボットで使用されている自然言語処理AIは会話のような自然文での検索は得意ですが、Googleのような単語による検索は苦手です。AIチャットボットで単語検索をすると、正しい回答が出ない場合があります。
そこで、利用者が単語検索した際は、ChatGPTが質問意図を聞き返し、正しい回答を提供できるよう補助的な働きをします。
ChatGPT自身に回答させることは、高いリスクが伴います。ChatGPTには、ユーザーと自然言語処理AIを繋ぐ橋渡し役だけをさせることで、プロモーションコード違反のリスクを排除できます。
ChatGPTに社外秘情報を学習させない利用ニーズに合ったシステム
OpenAI社がWebで公開しているChatGPTは、入力されたテキストをChatGPT自身の学習に利用していますので、利用を禁止している企業も多いと言われています。一方、ChatGPT自身の学習に入力されたテキストを利用しないAPI(※)がOpenAI社とMicrosoft社から有償で提供されています。このAPIをシステムに連携することで、社外秘情報をChatGPT自身に学習されることなくChatGPTが利用可能です。
また、Webで公開されているChatGPTと同様のチャット形式のインターフェースでは、毎回プロンプトを入力する必要があるため業務が効率化するとは言い難く、やはり利用ニーズにあったインターフェースやフローが必要です。そして、その先の効率化や利用の成功体験のためには、利用しやすく管理が簡単なシステムが求められています。
※:APIとは「アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programming
Interface)」の略称です。一言で表すと、ソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐインターフェースのことを指します。
(ビジネス+ITより引用 https://www.sbbit.jp/article/cont1/62752)
木村情報技術は、プロンプトの作成からChatGPT APIを活用したシステム開発と運用サポートまで、ワンストップで提供しています。製薬業界経験者も多数在籍し、業界に関する豊富な知識を有しています。ChatGPTを活用して、貴社の課題解決をお手伝いいたします。
ご興味がある方はお気軽にお問合せください。