製薬会社の営業DX戦略~リモートワーク環境下でもプロモーション活動の生産性を上げる方法~
ラクスル株式会社
ラクスル事業本部エンタープライズ事業部 アカウントエグゼクティブ
太田 百香 氏
ファーマIT&デジタルヘルス カンファレンス 2023
講演日 2023年10月18日
医師の働き方改革や営業所の統廃合などの環境変化により、プロモーション活動の在り方も転換期を迎えています。特に高い生産性を保つ仕組みの構築は必須です。約50社の製薬企業様が導入中の「ラクスル エンタープライズ」より、紙/印刷物でのプロモーション事例についてご紹介します。
目次
オフラインでも、より効果的・効率的なプロモーション活動が求められている
製薬会社を取り巻く環境の変化
昨今の製薬業界は、コロナ禍を経てますます変化の激しい状況が続いています。毎年の薬価改定により、各製薬企業は営業拠点の統廃合や研究・宣伝戦略の見直しなど、固定費やコストの削減を迫られています。また医師の働き方改革により、医療従事者と接する機会の確保に難渋しているのではないかと思います。今後はリソースの削減と効果の高い予算アロケーション、医師に対するオムニチャネルのアプローチ強化が求められていくことは明らかです。
医師の情報収集のオムニチャネル化
医師が普段どのような情報を収集しているのか調査すると、さまざまなチャネルを使い分けていることがわかります。代表的な3rdPartyはもちろん、製薬企業のWebサイトや紙資材を参考にされている医師も多く、多くのチャネルから情報を収集する傾向があることがわかってきています。
依然としてMRからの情報提供も有用視されており、他施設の処方や流通関連の状況など、個別具体的かつ流動的な情報ソースとして重宝されているようです。特に製品の採用や使用の意思決定が近づいてくる段階では、一般化されたメーカーの情報よりも、MRからの直接の情報提供がより影響力を強めるという傾向が知られています。
こうした情報を踏まえると、オムニチャネルをベースとしたアプローチはもちろん、検討度が高まるにつれて重視されるチャネルがオンラインからオフラインへ変化していく流れも念頭に置き、効率的なプロモーション戦略を練らなくてはならないことがわかります。
本日は、オンラインだけではなくオフラインプロモーションにおいてもDXを推進することで、効果・実態を見える化し、かけるリソースの削減と生産性の最大化が可能であるということをお伝えします。
オフラインプロモーションの生産性向上における考え方・課題
営業生産性の定義
本講演では、「生産性」を質と量の積をかけ、リソースで割ったものと定義し、それぞれ以下のように解釈していきます。
● 質:医療従事者の処方や行動変容につながるようなディテール
● 量:情報を届けることができた医師の数
● リソース:MR ― プロモーション活動に費やすことのできる時間や費用
質と量の把握が難しく、リソースが不足しているオフラインプロモーション
オフラインプロモーションの課題は、オンラインと比較し、質と量の把握及び評価が難しいこと、MRのリソースが不足していることではないでしょうか。
オンラインであれば1つの部署が企画から効果の分析までのPDCAを回すケースが多いと思われますが、オフラインプロモーションでは多くの場合、企画と実行担当者が別となります。
生産性における「質」を改善するためのアプローチ
企画と実行担当者が別となっている場合、企画担当者である本部の方が作成した資材は、実行担当者であるMRが各々の手段で利用するため、実際にどの程度使用され、どのように役に立ったのかを把握することは難しいです。
また、オフラインプロモーションにおいては、同じ資材でも計測すべき指標は配布物のターゲットや目的によって異なります。生産性における質を改善するためには、適切な施策とKPIの設定、データの可視化と収集、改善を繰り返すことが必要になってきます。
生産性における「量」を改善するためのアプローチ
「量」においては、いかにMRがプロモーション活動に時間を割くことができるかどうかが重要です。Sales Force
Researchが公開した「全世界2,900人以上を対象にしたセールスの動向に関する調査結果」では、では、営業担当者が実際に営業活動に費やせる時間は、実は勤務時間の3分の1しかないことがわかっています。
また弊社調査では、約4割のMRが、印刷物の発送に付随する事務処理を最も負担に感じていることがわかりました。
このように、MRの人数が多ければ多いほど、発送業務の効率化を行うだけでも多大な時間を削減できるため、改善インパクトは非常に大きいです。
紙資材を活用したプロモーション活動の効率化(DX)
ラクスルでは、質、量、リソースの改善を行うため、紙資材を活用したプロモーション活動の効率化を支援しています。
質・リソースの改善
MRの資材ニーズの特定と可視化によってPDCAの効果を向上させ、質とリソースを改善します。オンライン上で資材登録・発注を行えるようにすることで、本部担当者の資材登録、MRの資材発注は容易になり、無駄な業務を削減しつつMR/資材ごとのニーズを特定して効果の最大化に活用することができます。
量・リソースの改善
オンライン上でデータを登録するだけで、その後の印刷~発送業務をラクスルが行います。そのため、業務効率化を促し、医師に対して最小限の工数で網羅的にリーチできるようにします。資材を素早く手配することでプロモーション機会損失を防止することができます。
製薬会社様の活用事例
内資、外資問わず多くの製薬会社様でオフラインプロモーションのDX化のためにご活用いただいており、いくつか取り組み事例をご紹介します。
事例1:資材毎の利用状況を可視化し、廃棄削減および資材作成のPDCAを可能に
資材の正確な需要予測が立てられず、本部から営業所に送られる資材の廃棄と倉庫保管料が問題になっていた事例では、資材をオンデマンド登録し、営業所ごとに引き当てられる体制を整えました。資材ごとの利用状況を可視化することで、次の資材制作に活かせるようになっています。
事例2:印刷量を可視化し、単価を削減して能動的なプロモーションを可能に
複合機による印刷コストが想定外に嵩んでいた事例では、ネット印刷への切り替えでコストを1/3まで削減することができました。各営業所の資材利用状況が可視化されたことで、好業績の営業所の事例を参考に、他の営業所へ本部から提言することも可能になりました。
事例3:資材手配フローの削減で、新薬プロモーション機会損失を防止
手配の依頼から実際に資材が発送されるまで2~3週間の時間を要していた事例では、従来の本社や倉庫、印刷会社を経由して行われていた資材手配をオンデマンド体制へ切り替えることで、依頼から発送までの期間を2、3日に短縮することを実現し、機会損失を防ぐことができています。
事例4:ダイレクトメールで網羅的な情報提供を実現
希少疾患領域でのプロモーションにおいては、医師だけでなくコメディカルも含めた幅広い層への情報提供が必要です。
従来はオフラインでの集客状況が管理できず、また、コロナ禍によるリモートワークの影響でダイレクトメール発送作業の工数も確保できない状況の中で、デジタルに偏ったプロモーションにも限界が見えていました。
そこで、ラクスルのDMサービスをご利用いただくことで、最小限の工数で2,000人弱の医療従事者へダイレクトメール発送をすることができるようになり、従来リーチできていなかったターゲットへの情報提供を通じ、希少疾患患者の発見につながりました。
事例5:リモート環境下、MR 1,000名以上のダイレクトメール発送状況を見える化
1,000名以上のMRがリモート環境下で働いていたため、体制的にデジタル非アクティブ層へのリーチが困難であった事例です。この事例では、MRが各々の判断でダイレクトメールの作成・発送を行っていたため、送付先である医師の個人情報管理にも懸念がありました。ダイレクトメールの依頼から発送環境を整えることで、リモート環境下においてもMRからのダイレクトメール発送依頼業務が可能となり、また、各MRの活用状況も可視化されました。
まとめ
オフラインプロモーションであっても、効果・実態を可視化し、かけるリソースを削減することでプロモーション全体の生産性を最大化することが可能です。ラクスルのサービスは、資材活用状況を把握し、印刷と発送の手間を削減し、プロモーション機会創出・損失の防止にお力添えができると考えています。