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スペシャリティ医薬品時代に求められる次世代のデジタルマーケティング~現役医師が語る、現代の医師の情報ニーズとは~

記事公開日 2023.08.04
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記事公開日 2023.08.04

(株)HOKUTO 医師兼取締役 山下 颯太 氏
講演日 2023年4月21日(金)

スペシャリティ医薬品の時代が到来し、マーケティングのあり方が大きく変わろうとしている中、医師ニーズに合わせたオムニチャネルでの情報提供に試行錯誤されている方も多いのではないでしょうか。

リリースから約3.5年で医師の4人に1人が使うアプリへと成長した、医師向け臨床支援アプリ「HOKUTO」。本日は、HOKUTO開発医師が、現代医師の情報ニーズを解説します。

目次

HOKUTOの提供サービス

HOKUTOの提供サービス(1):臨床支援アプリ

我々はHOKUTOという医療支援アプリを通して、医学情報のインプットから臨床現場での活用まで、医師の体験を一貫してサポートしております。

機能(1)最新医学情報の入手

論文の要約や医療ニュース、エキスパートの知見などといったパーソナライズされたコンテンツがタイムライン形式で配信されており、日々の業務に役立つ情報をワンストップで入手できます。

機能(2)すべての医学情報を保存

タイムラインで配信される記事はブックマークすることができます。また、デジタルノート作成機能を備えており、あらゆる情報を臨床現場で見やすいフォーマットで保存し、素早く見返すことが可能です。

機能(3)横断的な医学情報検索

医学用語に特化した検索エンジンを搭載しているため、わからないことを調べたり、自分が保存した内容から必要な情報を素早く探し出すことが可能です。

アプリリリース後、約3.5年で医師会員数は8万人を突破

アプリリリース後、約3.5年で医師会員数8万人を突破しました。医療情報プラットフォームの中でも屈指の成長速度だと自負しています。

HOKUTOの提供サービス(1):医薬品マーケティング支援

一方、医師向けサービスの提供によって集客した会員基盤を生かし、医薬品マーケティングの支援も行っております。国内売上高トップ10ファーマのうち、70%と取引があります。

現代の医師の情報ニーズ

現代の医師は、情報チャネルの多様化と、医学情報の増大という2つの大きな環境変化に晒されており、その結果情報を受け止めきれない、情報を覚えきれないという2つの課題が生じています。

医師を取り巻く環境の変化(1)情報チャネルの多様化

数十年前まで、医師が情報収集するチャネルは非常に限定的でしたが、現代ではサービスに加えてデバイスも多様化し、ありとあらゆるチャネルから情報を受け取ることができるようになっています。

医師を取り巻く環境の変化(2)医学情報量の増大

世界に存在する医学知識の量が2倍になるまで、1950年代であれば約50年を要していましたが、近年ではわずか数か月で2倍になるといわれています。医療の進歩に伴って、世界の医学情報は爆発的なスピードで増加を続けています。

環境変化が生み出す課題(3)情報を受け止めきれない

医師のもとには日々ありとあらゆるチャネルから大量の情報が届くので、受け止めて消化するのが非常に困難になってきています。

製薬企業から届く情報量について、約60%の医師が「多い」と回答し、毎日送られてくるメールはほとんどチェックしていないという声も聞かれます。また医師向けWebサイトやメールで配信される製薬企業の情報をクリックする頻度は平均40%、さらに中身を確認する頻度は平均35%ですから、情報が届く確率は単純計算で平均14%です。

環境変化が生み出す課題(4)情報を覚えきれない

情報量の増大によって、インプットした情報を臨床現場で想起するプロセスも非常に困難になっています。医師は既知の情報を頻回に調べながら業務を行っています。

どの世代の先生も、最も調べているのは”概要を知っているものの詳細を思い出せない情報”です。医薬品に関する情報を思い出せず手間取った経験がある医師は88%に上ります。

※ N=254
2022年実施 HOKUTOユーザーアンケート

現代の医師の情報ニーズまとめ

医師はこれまで以上に受け取る情報を取捨選択したがるようになっています。つまり、「求める情報を、求めるタイミングで、求める接点で受け取りたい」という医師のニーズが顕在化していると我々は考えています。

今困っていない情報はどうしてもスルーしてしまいますが、当該の薬剤が適応される患者さんを担当していれば、提供された情報にしっかり目を通すようになります。同じ情報でもタイミングによって医師のリアクションが180度変わるのです。

医師ニーズに合わせたデジタルマーケティング

医師のニーズに合わせた情報提供のキーポイント

1つの情報をより多くのターゲットに届けようとする一般的なデジタルマーケティング手法では、画一的な情報提供になってしまう上、閲覧の質が適切に評価できません。医師のニーズに合わせた情報提供をするためには、医師体験の理解と、それを踏まえた接点の構築が重要です。認知、理解、想起、処方、処方増・継続処方が医師の行動だとすれば、体験はこれらの行動変容を促進、あるいは阻害する要素です。

医師の体験を理解するための方法

医師の体験を理解するためには、定量的な分析だけでなく、定性的な分析も行います。クローズドエンドのアンケートによるデータ解析といった定量的な分析は、信頼性が高く客観性がありますが、最大公約数的な答えになりがちです。医師のインタビューや臨床現場における医師観察といった定性的な分析は、主観的でバイアスが生じやすい一方、深い洞察が得られます。そこで得た医師の体験に関するインサイトをもとに、接点を再構築します。

医師の体験起点で接点を再構築する

医師体験起点で接点の再構築を行うと、「行動変容を促進する体験、妨げる体験とは具体的に何か」、そして「その体験を実現するため、あるいは取り除くために何をすべきか」を考えることができます。自社視点起点では、メッセージの内容、チャネルの種類、伝達方法からスタートしてしまうのと対照的です。

デジタルマーケティングにおける着眼点には、どの医師にどのくらいメッセージが届いたかだけでなく、メッセージを受け取った医師の行動変容の様子が加わります。自社起点では独立しがちなデジタルチャネルと他チャネルも、医師体験を軸として接続、融合されることになります。

HOKUTOアプリの医師向け機能・施策の企画プロセス

HOKUTOが急速に医師会員を増やしている真髄が、アプリ開発の企画プロセスです。まず定性分析を徹底的に深堀して行います。開発チームが直接医師にインタビューするだけでなく、実際に許可を取って医師の行動を観察することもあります。定性分析に基づいた仮説を立てた上で、仮説が一般化可能なのかどうかをアンケートなどで定量分析します。得られたインサイトをもとに、望ましい体験を実現するための機能や施策をリリースするのです。

HOKUTOにおける過去の取組ケース

ある大手医療機器メーカーとのプロジェクトの例をご紹介します。商品は、ECサイトで個人が購入できるポケットエコー、単価は100万円以下、iPhoneほどのサイズでバッテリー駆動が可能ものです。この商品について、医師や研修医を対象に幅広く認知拡大と興味喚起を行いました。

まずタイムラインで配信して幅広い認知を獲得し、さらに真に興味を持ってもらうため、エコーのテクニックコンテンツを配信し、利用時に製品を訴求することにしました。

こうしたテクニックコンテンツは臨床現場で閲覧されるため、従来の不便なエコーを使用するペインポイントでの情報提供を行ったのです。結果として、複数台のエコーの購入が実際に測定できました。

本講演のまとめ

チャネルの多様化と医学情報量の増大がとどまることを知らない中、医師はますます情報を取捨選択するようになります。ニーズに一致しない情報は情報洪水の中で見向きもされなくなっていくでしょう。

ニーズに合わせた情報提供をするには、医師の行動ではなく、行動変容を促す体験に注目し、定性、定量の両面から把握しなくてはなりません。医師の体験起点で、オフライン、オンラインのチャネルを超えて接点を再構築することが重要になっていくのです。

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