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マーケティングオートメーション ―休眠会員向けアプローチ編―

記事公開日 2024.01.31
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記事公開日 2024.01.31

製薬企業の医師向けオウンドサイトを運営していく中で、課題の1つとなるのは休眠会員でしょう。アクティブ会員はメールマガジンやインターネット講演会の告知などに反応がある一方で、休眠会員は上記のような通常のアプローチでは反応が得られない方々です。今回は、そうした休眠会員へのアプローチについて、私たちMCI DIGITALが運営する『小児科向けサイト グロースリング※1』を例に、具体アクションとその結果を紹介します。

※1 「小児科向けサイト グロースリング」は国内外の論文や学会レポートの配信を中心に、小児科領域の先生方の生涯学習支援に重点を置いたコンテンツ群を掲載している無料会員制サイトです。

目次

休眠会員向けのアプローチを行う前に

休眠会員の想定

今回の取組を行うに際し、グロースリングにおける更新・配信頻度を考慮し、休眠会員の定義、ユーザー像と彼らに伝えるべき内容について検討しました。

休眠会員の定義

(1) サイトに3か月以上訪問していない
(2) 配信されたメールを3か月以上開封していない

ユーザー像

・小児科の最新情報や論文を知りたい
・「グロースリング」の存在を忘れていた
・仕事が忙しかったため、グロースリングのサイトやメールを確認する余裕がなかった
・久々に「グロースリング」を訪問したが、ログインID/PWを忘れてしまった。再発行はしたくない

伝えるべき内容

・「新しい機能」や「新規コンテンツ」の紹介
・他会員も閲覧している「人気コンテンツ」の紹介
・これを見ておけば間違いない「おすすめコンテンツ」の紹介
・ログインID/PWを忘れていても、配信メールからであればパスワード不要でコンテンツが閲覧可能な点

伝えた後の想定

・反応がなければアクティブ化は期待できないため、何かしらのアクションがあるまでメール配信停止措置をとる

マーケティングオートメーション(MA)ツールの設定

「グロースリング」ではMAツールとしてAdobe Marketoを採用しています。今回は我々が実際にAdobe Marketoに設定した内容の一部を簡単にご紹介します。その他のMAツールを採用、またはご検討中の方々にも同様の機能が存在するケースが多いため参考にしていただければ幸いです。

スマートキャンペーンの設定方法

(1) スマートリストの設定

休眠会員の定義に合わせてスマートリストを設定します。Marketo上に蓄積されたユーザーの行動履歴データから、条件を指定して、休眠会員リストが自動生成されるようにします。

スマートリストの設定画面

(2) スケジュールの設定

日次でのバッチとしてスケジュールを設定しました。これで毎日、スマートリストに追加されたユーザーに対してキャンペーン用のメールが自動配信されます。

スケジュール設定画面

(3) エンゲージメントプログラム:ストリームの設定

エンゲージプログラムでは配信メールと中日、そして配信停止措置を設定します。

ここでのポイントは中日を設定することです。この設定をしない場合、土日に配信されてしまうケースがあります。弊社の経験上、土日に配信されたメールは開封率・クリック率共に低いため、休眠会員向けのメールでは殊更おすすめしません。※祝日も同様ですが、Marketoの場合は運用コストが増えるため現実的ではありません。

ストリーム設定画面

休眠会員向け取り組み結果

結果は下記のとおりです。

キャンペーン1通目

主な内容 人気コンテンツの紹介
件名 【最近ご無沙汰の方へ】人気コンテンツのご案内※2
メール冒頭の挨拶文: ◯◯先生
「グロースリング」の人気コンテンツをご案内させていただきます。
ぜひ一度、サイトにアクセスしてご覧ください。
※グロースリングからのメールは、パスワード入力なしにコンテンツをご覧いただけます。
反応率 開封率:7.2%
開封対クリック率:18.8%

※2 本タイトルは、「グロースリング」の媒体特性である“医師が自発的に会員登録している”点を鑑みつけており、製薬企業で採用するメール件名はサイトと会員との関係性に合わせ適切なものを考慮する必要があります。

過去3か月でメール開封実績の無い会員が7.2%も開封をし、開封した休眠会員の約2割がメール経由でサイトに訪問しました。メールマガジンでは反応がなかったものの、今回のメールで新しいコンテンツの発見やサイトの再認識が行えたと考えられます。

キャンペーン2通目

主な内容 先生におすすめのコンテンツ紹介
件名 【最近ご無沙汰の方へ】おすすめコンテンツのご紹介
メール冒頭の挨拶文: ◯◯先生
小児科向けサイト「グロースリング」から、〇〇先生におすすめのコンテンツをご紹介させていただきます。
ぜひ一度、サイトにアクセスしてご覧ください。
※グロースリングからのメールは、パスワード入力なしにコンテンツをご覧いただけます。
反応率 開封率:2.0%
開封対クリック率:75.0%

休眠会員はメール開封実績がそもそもない状態のため、1通目で反応がない場合は2通目も反応がほぼないと考えられます。一方で2通目を開封したユーザーは個別案内が来たと反応して開封・クリックまで至ったと考えられますので、開封実績のあった会員に対しては個別案内を強化するといった対応が好ましいものと考えられます。

キャンペーン無反応者への対応

定期メールの配信停止措置

1通目、2通目でも反応がない場合、今後いかなるメールを配信したとしても反応を得ることは難しいと想定されます。それどころか、メール配信によって当サイトへのネガティブな印象が高まることも考えられますので、自らサイトへ再アクセスするアクションがあるまでは、定期的なメール配信を一時停止し、学会レポートの掲載等の特別なコンテンツ掲載やイベント告知がある場合のみをメール配信の対象とし、再アクティブ化の機会を狙う形に対応を切り替えます。会員が再アクセスした際は、定期メールの配信を自動的に再開するようMarketoに設定します。

マーケティングオートメーション化するメリット

メリット ・配信リストの自動抽出
・配信手続きの自動化
・配信対象者の想定が少数でも対応リソースを考慮せずキャンペーンを実施できる
考慮点 リストの定義が頻繁に変わるメールアクティビティには不向き
リストの抽出条件にMAと自動連携していないデータを加味する場合は、MAのメリットを享受できない。
推奨 MAに適したメールキャンペーンの仕様について、製品チーム側の理解促進が必要。

MAツールは、指定した条件の対象者に指定したメールを自動的に配信できるため、手動対応時に発生するリソースや予算の制限を乗り越えることが可能な点がメリットだと考えます。

まとめ

休眠会員へのアプローチは、対象者の条件も固定化しやすくMAとして取り組みやすいテーマです。自動化により運用リソースを気にせず、休眠会員の再活性化の効果も一定数期待できますので、MAツール導入時の基本施策としておすすめです。
また、製品チームが希望されるメールキャンペーンの中には、他のデジタルチャネルでの視聴実績やMRの面談実績を条件にして配信対象者を絞るような仕様が多く採用されていますが、このような場合、1本目の配信対象者リストを従来通り手動で作成し、その1本目に対する反応に応じて2本目以降のメールの自動配信(分岐も含めて)を行うMAキャンペーンが機動的です。MAのメリットも享受できるためおすすめの方法です。

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