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訪問規制状況の変化から考察する、医師への最適な情報提供手段

記事公開日 2023.08.07
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記事公開日 2023.08.07

本記事は、製薬業界の動向を把握していただくことを目的としています。
DM白書に掲載されている詳細なデータについては、本記事では取り扱っておりませんのでご了承ください。

目次

―コロナ禍を機に大幅に上昇した「完全アポイント制」

ご存じの通り、製薬企業のMRと医師のコミュニケーション上の規制は、COVID-19の影響を強く受けています。本記事では、2019年4月と2023年4月のデータ比較から具体的な変化を明らかにします。

MR訪問規制状況の推移~コロナ禍前・中・後~

2019年4月、MR訪問規制状況は、「時間規制」、「完全アポイント制」、「規制なし」の割合がほぼ同等で、「完全面談禁止」は僅か1.9%でした。

しかし、2023年4月には大きな変化が見られました。「完全アポイント制」の採用率が32.9%から50.6%へと大幅に上昇し、半数以上を占めるようになりました。一方、「時間規制」の割合は32.0%から16.1%へと減少、「規制なし」の割合も若干ながら減少しました。

―訪問規制状況が示す、製薬企業が理解すべきコロナ禍以降の状況とは?

製薬企業のマーケティング戦略策定にあたり、訪問規制状況の変化から得られる示唆はどのようなものでしょうか。

第1に、「完全アポイント制」の増加は、MRにとって、担当医師との訪問面談を計画し、予め指定された勤務先施設の面談予約プロセスに従って確実に面談予約を確定させていく行動習慣がより重要になっていることを意味します。

第2に、規制なしの割合が完全に消えることなく、一定の存在感を保っていることは、医師との直接的な対話がGPを中心に依然として重要であることを示しています。医師との信頼関係の構築と維持は、医療用医薬品のマーケティングにとって不可欠な要素です。

第3に、医師との新たなコミュニケーション方法を探求する必要性を示しています。COVID-19はオンラインミーティングやリモートワークを日常的なコミュニケーションツールとして普及させました。

COVID-19によってもたらされた新たな状況に対応するため、MRは新たなスキルを習得し、新たな戦略を採用する必要があります。

―「完全アポイント制」の医療施設に勤務する医師への最適なアプローチ方法

さて、続いて2019年4月から2023年4月にかけて増加傾向にあった、「完全アポイント制」の医療施設に勤務する医師への最適なアプローチ方法を考察します。特に、医師が薬剤の処方行動が変わるきっかけとなる情報源の利用状況に基づき、有効なマーケティング戦略はどのようなものなのでしょうか?

訪問規制状況の変化と医師の処方行動に影響を及ぼす情報源の変化

COVID-19前後の訪問規制状況の変化と、医師の処方行動に対する影響を解析します。特に、2023年4月のデータを基に、規制の種類による情報源の利用状況の違いを分析し、今後のマーケティング戦略に対する示唆を提供します。

まず、全体的な視点から見ると、規制の厳格さが増すと、MR(面談・電話)から得られる情報の影響力が減少する傾向にあります。これは、面談や電話を通じた直接的なコミュニケーションの機会が減少することが要因と考えられます。

一方で、規制が厳格な場合でも、インターネットサイトやインターネット講演会から得られる情報への依存度が高くなる医師が増加する傾向にあります。医師にとって、情報を得るための手段が多様化していることを示しています。

次に、訪問規制のレベル毎の情報源の利用状況を詳しく見ていきます。

「規制なし」の場合、最も影響力が高い情報源はMR(面談・電話)の63.7%です。しかし、インターネットサイト(32.3%)やインターネット講演会(43.8%)もそれぞれ高い影響力を持っています。MRによる直接的なコミュニケーションだけでなく、デジタル情報も重要であることを示しています。

「完全アポイント制」の場合でも、MR(面談・電話)から得られる情報の影響力が46.5%と最も高くなっていますが、インターネットサイト(37.9%)やインターネット講演会(49.5%)も重要な役割を果たしています。

一方、「完全面談禁止」の場合、MR(面談・電話)から得られる情報の影響力が23.0%に減少し、代わりにインターネットサイト(43.5%)やインターネット講演会(49.1%)から得られる情報の影響力が増加しています。

―製薬企業のマーケティング担当者が考慮すべき、コロナ禍以降の情報提供方法

これまでの分析結果から、製薬企業のマーケティング担当者は以下のことを考慮すべきです。

第1に、MRとの面談や電話によるコミュニケーションは、依然として重要な情報源です。しかし、同時に、デジタルチャネルへの対応も重要です。

第2に、コロナ禍を経た現在、回答医師の50%以上を占めるまで急増した「完全アポイント制」の医療施設では、インターネットサイトやインターネット講演会が重要な情報源となっています。製薬企業は、デジタルによるアプローチを最大限に活用する戦略を考えるべきです。また、規制が厳格になるほど、メールによる情報提供も影響力が増す傾向にあります。

製薬企業のマーケティング担当者は、MRの役割だけでなく、デジタルマーケティングの重要性も認識する必要があります。医療施設それぞれの規制に合わせて、最適なコミュニケーション手段を選択し、情報提供を行うことが求められます。

出典

DM白書2023年夏号

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