医師評価で測る、オムニチャネルマーケティングにおけるチャネル戦略の「強み」と「弱み」
DM白書2025年夏号では、製薬企業のオムニチャネルマーケティングに対する医師評価を確認するため、従来から取得している医師が製薬企業から受け取る情報の関心事へのマッチ度に加えて、医師が自ら情報収集しようとした際の各チャネルの利便性に関する評価を追加しました。これにより、受動的なケースと能動的なケースの両面での医師評価を取得しています。
1.調査概要と評価軸
1-1.調査設計のポイント
本調査は、「医師が日常的に情報を取得している製薬企業」について、
- 1. 情報収集の利便性
- 2. 情報提供内容への関心度
を主な評価軸とし、チャネル横断での体験(オムニチャネル)を評価・比較しています。
1-2.評価指標・ランキング化の方法
情報収集の利便性
● MR(対面)、MR(メール)、オウンドメディア、インターネット講演会、医療系ポータルサイトの5チャネルごとに、「追加情報をどの程度スムーズに収集できるか」を0~10点で評価
● 各チャネルの平均スコアを総合スコアとし、偏差値化・ランキング化(TOP40)
情報提供内容への関心度
● 「企業からの情報提供全体」への関心度を0~10点で評価
● 平均値を基にスコア化・ランキング化
関心度×利便性でみた各社のポジショニング分析
● 関心度×利便性評価により散布図分析で、各企業の現在のポジションを可視化
2.関心度と収集利便性のポジショニング分析
本調査では、関心度×収集利便性の散布図分析を行いました。
この2軸により、各企業のオムニチャネル戦略の「強み」と「弱み」を確認いただけます。
(1) 高関心度×高利便性(理想型)
- ● 医師の期待に応える有用な情報を、ストレスなく取得できる環境を実現
- ● 競争優位性が高く、エンゲージメント強化が期待できる
(2) 高関心度×低利便性(機会損失型)
- ● 情報の価値は高いが、アクセスや追加情報取得の動線が複雑・不便
- ● デジタル統合やチャネル連携の改善余地が大きい
(3) 低関心度×高利便性(潜在成長型)
- ● アクセスは容易だが、情報内容が医師ニーズと乖離
- ● コンテンツの見直しや医師インサイトの再分析が必要
(4) 低関心度×低利便性(再構築型)
- ● オムニチャネル戦略の根本的な見直しが必要
- ● 他社比較・ベンチマークを通じた抜本的改革が急務
3.データが示唆する医薬品マーケティングの今後
3-1.医師が求める「体験価値」の変化
即時性・パーソナライズ性
「知りたい時に、知りたいレベル感で」――これがデジタル時代の医師のニーズではないでしょうか。チャネルごとの情報断絶や画一的な情報発信では評価されません。
情報設計×UI/UXの最適化
どれだけ有用な情報も、「探しにくい」「見つからない」では評価されません。サイト構造や検索性、MRのナビゲーション力などが、体験価値の差を生みます。
3-2.オムニチャネル推進のカギ
データ連携・一元化
MR活動履歴、サイト閲覧ログ、Web講演会視聴ログなど、チャネル横断で医師の行動データを統合・分析し、個々の志向性や課題に応じた情報提供を目指す必要があります。
コンテンツPDCAの高度化
医師のアクセス状況や関心度評価を元に、コンテンツ企画・改善を継続的に行う体制が求められます。
現場MRのデジタル活用促進
MRが単なる「情報伝達者」から、「情報ナビゲーター」へ。対面・非対面を問わず、医師の質問や関心に応じて最適なデジタルリソースを案内できるスキルの強化が必要です。
4.おわりに
「最適な情報を、最適なタイミングで、最適なチャネルを通じて」提供するオムニチャネル体験の高度化が、貴社のブランド価値と市場での競争優位を高める原動力となるはずです。
本調査のランキングデータを、競合他社と相対的に見た自社の現状把握・改善検討にお役立ていただければと思います。
(文:河南)
出典
DM白書(医師版デジタルマーケティング白書)2025年夏号
調査期間:2025年4月10日~4月22日
調査方法:インターネット調査
有効サンプル数:医師5,163名