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記事情報
働き方改革により勤務時間が減少した医師の情報収集スタイルの変化と、取るべき対応とは?
「DM白書ラボ」では、DM白書本編には未収載のデータを提供しています。今回は、2024年4月に始まった「医師の働き方改革」が進んだことで、実際に勤務時間が短くなった医師の情報収集活動にどのような変化が起こったのか調査した結果をご紹介します。「DM白書2024年秋号(ラボ限定設問)」(n=5,146名)の回答を対象にしています。
「働き方改革によって帰宅後の時間が増えた医師」を対象に、1週間あたりの各チャネルに対する接触時間(h/週)を調査したところ、労働時間短縮計画が未着手の施設に勤務する医師と比較して、「学会誌」、「医療系雑誌・新聞」、「MRからのメール」の時間が増えて※1いました。
インターネットチャネルには大きな差は見られなかったものの、この結果は、「院内における情報収集時間の増減」と「帰宅後の情報収集時間の増減」が打ち消しあい、変化が小さく見えている可能性が否定できない点と、医師座談会のコメントで、「家でインターネット講演会は見ない」「調べたいことはだいたい院内で終わらせて、ポイ活は家です。」といった声があった※2点を踏まえて、今回は、勤務前、勤務中、勤務後、帰宅後、それぞれどのタイミングで、どのチャネルを利用しているのか、改めて調査を行いました。
目次
前提条件
・HPの医師に限定して集計
結果サマリ 労働時間短縮計画の推進状況別、情報収集タイミング・時間
勤務施設における労働時間短縮計画の推進状況別に、情報収集タイミングごとの情報収集時間を集計しました。※3
- ※3 設問「2024年4月に開始された医師の時間外労働規制について、先生のご勤務先での医師労働時間短縮計画策定状況をお教えください」の回答別に、設問「各媒体から疾患・薬剤情報について、1週間に何時間ぐらい情報提供を受けていますか」の回答を集計。その平均値を、設問「先生の専門領域の薬剤・疾患情報の1日の情報収集を行うタイミングと、利用する情報源(チャネル)は、勤務開始前、勤務中、勤務後、どのタイミングで行うことが多いでしょうか。情報源ごとに、勤務開始前、勤務中、勤務後の合計が100となるように、比率をお答えください。」の回答結果と掛け合わせ、タイミング別の情報収集時間を算出。「勤務後」については、「勤務後院内で」「勤務後自宅で」の2つに分けて調査。労働時間短縮計画が推進中の医師は、設問「時間外労働規制によって、先生の勤務時間がどう変化したかお教えください。」の回答別の結果も算出。
タイミング別の情報収集時間(h/週)
労働時間短縮計画が「推進中」~「未着手」の施設の医師を比較すると、各タイミングで情報収集する時間に、大きな変化はありませんでした。労働時間短縮計画「推進中」医師のうち「勤務時間が減少」を選択した医師は、「推進中」医師の20%程度にとどまっており、時間外労働規制の成果が十分に出ていない施設が多いのではないかと思われます。
この結果を踏まえて、今後起こり得る変化について考えるため、「労働時間短縮計画の推進状況別」ではなく、「時間外労働規制によって勤務時間が減った医師」と「勤務時間に変化が起きていない医師」を比較する形で、情報収集活動の変化を見ていきます。
結果サマリ 勤務時間への影響別、情報収集タイミング・時間
時間外労働規制によって勤務時間が減った医師と、変化していない医師の情報収集時間を情報収集タイミングごとに比較しました。※4
- ※4 設問1「2024年4月に開始された医師の時間外労働規制について、先生のご勤務先での医師労働時間短縮計画策定状況をお教えください」で「策定され推進中」と回答し、設問2「時間外労働規制によって、先生の勤務時間がどう変化したかお教えください。」で「推進前よりも減った」と回答した医師を「(1)勤務時間が減少」、設問1で「策定され推進中」「策定中」「未着手」のいずれかを回答し、設問2で「変わらない」と回答した医師を「(2)勤務時間に変化なし」と定義して集計。
タイミング別の情報収集時間(h/週)
勤務時間が減った医師の情報収集時間は、勤務開始前と勤務中、勤務後院内で、においてやや増加し、勤務後に自宅で、の時間がやや減少、全体では週に30分ほど長くなっていることが分かりました。
結果サマリ 勤務時間への影響別、チャネル別の情報収集時間
時間外労働規制によって勤務時間が減った医師と変化していない医師のチャネル別の情報収集時間を比較しました。
チャネル別の情報収集時間(h/週)
大きな変化ではありませんが、勤務時間が減少した医師は、インターネット講演会から情報収集する時間がやや減少し、先輩・同僚の医師仲間から情報収集する時間などがやや増加しています。
また、勤務時間が短くなったものの、MRとの面談時間に大きな変化はありませんでした。
結果サマリ 勤務時間への影響別、タイミング別、チャネル別の情報収集時間
時間外労働規制によって勤務時間が減った医師と変化していない医師の、タイミング別・チャネル別の情報収集時間を比較しました。
勤務開始前・勤務中のチャネル別情報収集時間(h/週)
勤務後院内・勤務後自宅でのチャネル別情報収集時間(h/週)
週に0.3h(約20分)以上、各タイミングで活用されているチャネルを「主要なチャネル」として見ていくと、その種類には大きな変化はありません。「主要チャネル」および、週に0.08h(約5分)以上増減したチャネルは下記の通りです。インターネット講演会からの情報収集時間はやや減少していますが依然として長時間を占めています。
主要なチャネル | 週に0.08h(約5分)以上増減したチャネル | |
---|---|---|
勤務開始前 | インターネットサイト | ― |
勤務中 |
先輩・同僚の医師仲間 インターネットサイト MR(面談・電話) 薬剤師 |
先輩・同僚の医師仲間(増) |
勤務後院内 |
インターネットサイト MR(面談・電話) インターネット講演会 学会誌 |
MRとの面談・電話(増) |
勤務後自宅 |
インターネットサイト インターネット講演会、 学会誌 |
インターネット講演会(減) |
※本記事に掲載している表はこちらよりダウンロードいただけます。
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ラボ編集部からのコメント
「労働時間短縮計画が推進中」の施設に勤務する医師のうち、「勤務時間が減少」を選択した医師は約20%であり、現段階では働き方改革がうまくいっている施設はごく一部に限られていると考えられ、働き方改革による労働時間の短縮は道半ばなのではないかと思われます。
「働き方改革による、医師の帰宅後の情報収集時間の変化」※5でも、労働時間短縮計画の推進によって、帰宅後の時間が「1週間あたり5時間以上増えた」と回答した医師は5.7%、「1週間あたり1時間~5時間未満増えた」と回答した医師は17.4%にとどまっていました。
働き方改革によって勤務時間が減った医師であっても、各タイミングや各チャネルの情報収集時間の変化は小さく、現段階では情報収集スタイルにそこまで大きな変化は起きていないと想定されます。
また、働き方改革で勤務時間が短くなった医師と勤務時間に変化がない医師を比較したところ、勤務時間が短くなったとしても帰宅後に情報収集する時間が増えているわけではないことが分かりました。タイミングとしては勤務後に院内で情報収集している時間が最も増加しており、業務が早く終わるからこそ、院内に残って自己研鑽として情報収集する時間を作り、帰宅後はプライベートの時間として切り分けている医師が多いのではないかと考えられます。
「働き方改革による、医師の帰宅後の情報収集時間の変化」※5では、「学会誌や医療系雑誌・新聞からの情報収集は帰宅後の時間の活用方法ではないか」、「勤務時間内は院内でしか接触できないチャネル、帰宅後にインターネットチャネルからの情報収集といった使い分けが生まれているのではないか」という仮説がありましたが、本調査の結果から、帰宅後の情報収集時間は増加しておらず、学会誌や医療系雑誌・新聞からの情報収集も、勤務後を中心に院内で行われる時間が増加しているケースが多いと考えられます。
本調査で明らかになった、タイミング別・チャネル別の増減と、製薬企業が取るべき対応は以下の通りです。
週に0.08h(約5分)以上増減したチャネル | 変化に合わせて製薬企業が取るべき対応 | |
---|---|---|
勤務中 | 先輩・同僚の医師仲間(増) | 各施設で自社薬剤の処方経験が豊富な先生を早期に育成することで、今まで以上に薬剤の使用感などが院内で伝播しやすくなると考えられます。 |
勤務後院内 | MRとの面談・電話(増) |
コロナ禍以降、「あらかじめ決められた時間に面談するスタイル」が定着していますが、勤務後院内における時間が活用されていると考えられます。 このことから、今まで以上に各施設ルールや医師の勤務時間などの個別事情に合わせたアポイント取得を心がける必要性があるでしょう。 |
勤務後自宅 | インターネット講演会(減) | 依然として活用されているチャネルではありますが、これまで以上に開催時間に対する配慮や、追っかけ再生機能など視聴しやすさへの工夫が必要になると考えられます。 |
今後明らかにすること
働き方改革によって医師の勤務時間短縮が実現され、新たな情報収集スタイルが作られるまでには時間がかかると思われるため、今後も定点調査を行っていく予定です。
出典
DM白書2024年秋号(ラボ限定設問)
調査期間:2024年7月12日~7月23日
調査方法:インターネット
有効サンプル数:医師5,146名