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ChatGPTがもたらすより良いヘルスケアのかたち

記事公開日 2024.06.19
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記事公開日 2024.06.19

日本マイクロソフト株式会社
医療・製薬営業本部長 清水 教弘 氏
ファーマIT&デジタルヘルス エキスポ2024
講演日2024年4月19日

医療と健康に関する情報が爆発的に増加していることに加えて、近年の技術革新に伴い、生成AI をはじめとした、さまざまな革新的技術への期待が高まっています。

今回は、ヘルスケア関係者の皆様が安心して先端技術を活用できるよう、ChatGPTにおけるデータ保護についてのご説明と、医療現場におけるChatGPTの活用事例を幅広くご紹介します。

目次

驚異的なスピードで広まるChatGPT

これまでのAI技術では、タスクを実行するために人間が手動でデータ整理やルール設定をする必要がありました。しかし、ChatGPTなどの大規模言語モデルでは、大量の学習済みテキストデータを駆使することによって、自動的にさまざまなタスクへの対応が可能となりました。

近年、ChatGPTをはじめとした新しいテクノロジーが、今まででは考えられないスピードで台頭してきています。

具体的な例として、ChatGPTとその他の代表的なオンラインサービスとで、100万のユーザーに使われるまでの期間を比較すると、FacebookやX(旧Twitter)が約1~2年であったのに対して、ChatGPTはわずか5日でした。

また、月間で1億人が使用している状態になるまでの期間は、FacebookやX(旧Twitter)が約5年かかっているのに対し、ChatGPTはわずか2ヵ月でした。

それだけ、新たなテクノロジーが圧倒的なスピードで世の中に浸透している状況です。

ChatGPT利活用でのヘルスケア領域における課題

「ChatGPTは嘘をつく」「著作権の問題はどのようになっているのか」ということをニュースなどで取り上げられることがあり、ヘルスケア領域で活用する際の課題と思われるかもしれません。

しかし、 この点に関しては、一般の皆さんが利用できる、公開データを学習したChatGPTにて問題となるところです。

一方で、ヘルスケア領域においてChatGPTを利用する場合は、病院や医薬品などの機微なデータを使用するため、高度なセキュリティ・コンプライアンスに対応した安全なAI基盤を用意する必要があります。

具体的には、各社において閉じた環境を構築し、社内データ、入力されたプロンプト、および生成されたアウトプット等が外部に流出しないよう、対策を講じる必要があるでしょう。

マイクロソフトでは、クラウドを利用した安全なAI基盤を構築し、データが保護された状態で利用できる環境を提供しています。

ChatGPT利活用でのヘルスケア領域における課題

ヘルスケア領域におけるChatGPTの活用

ここからは、実際の医療現場でChatGPTの活用が期待できる例を紹介します。

(1)看護サマリの作成

医療の現場ではさまざまなサマリを作成する必要があり、医療従事者の負担になっているとのことですが、ChatGPTを活用することにより、サマリを短時間で作成することが可能となります。例では、ChatGPTを用いて看護サマリを作成しました。

実行したプロンプト
あなたは看護師です。看護記録より看護サマリを作成してください。

看護サマリ作成 プロンプト実行結果(1)
看護サマリ作成 プロンプト実行結果(2)

(2)ヒヤリハット作成

医療事故が起こった際に作成するヒヤリハットに関する報告書を、ChatGPTを用いて作成した例です。

医療事故情報収集等事業では20項目ほどの記載事項があるため、ChatGPTで下に示したプロンプトを入力します。その結果、看護記録から必要な項目を抜き出した表形式のフォーマットで、ヒヤリハット報告書を作成することができました。

不足している項目もありますが、チューニングなどをしない状態でスライドレベルの報告書を作成することが可能です。

実行したプロンプト
医療事故情報集等事業で記載されている各項目を抜き出し表形式のフォーマットで作成してください。

ヒヤリハット作成 プロンプト実行結果

(3)診療サマリ作成

診療サマリもChatGPTで作成できます。例では、電子カルテのデータから、Excelのフォーマットで作成することができました。

一方で、AIも完璧ではありません。主訴などの足りない項目もあるため、最終的には医療従事者による最終確認が必要となります。

実行したプロンプト
あなたは医者です。患者情報を迅速に確認したいです。その為、下記文章を項目別にテンプレート形式で要約をして、Excelに合うフォーマットで形成してください。

診療サマリ作成 プロンプト実行結果(1)
診療サマリ作成 プロンプト実行結果(2)

(4)薬歴文書作成

薬歴文書についてもChatGPTで作成できます。薬歴は、患者さんの情報と薬剤師による服薬指導の内容で構成されています。例では、服薬指導の会話内容はAIで文字おこしをしました。

表紙と薬歴とに情報を分けて作成するため、今までの例と比べるとプロンプトが細かくなってはいますが、必要な情報が記載された表紙とSOAP形式の薬歴を作成することができました。

今まで薬剤師さんが手動で行っていた薬歴の作成も、このように大きく変わってきているところです。
実行したプロンプト
私は薬剤師です。以下情報を基に薬歴文書を作成したいです。[患者情報]は基礎情報、[服薬指導の会話内容]を基に新たに[処方内容]を患者へお伝えしています。
この情報を基に表紙と薬歴(SOAP)に分けて作成してください。表紙には患者の基礎情報、併用薬、既往歴、生活像などが書かれるのが一般的です。一方、SOAP薬歴には各回の会話でなされた内容が反映されます。

薬歴文書作成 プロンプト実行結果(1)
薬歴文書作成 プロンプト実行結果(2)

(5)学会発表用フォーマット作成と参考文献の検索

研究者がChatGPTを活用することにより、研究内容をもとにした学会発表のフォーマットの作成と、参考文献を検索することもできます。

例では、学会発表のためのフォーマットを、研究メモの一覧から5枚のスライドにまとめる形で作成することができました。さらに、生成AIは対話ができるため、各スライドに関連する論文を検索するように指示することで、PubMedから引用した論文を日本語で要約された状態で提供してくれます。

このようにChatGPTを使うことで、研究者の方が類似する論文を探す手間を大幅に削減することができます。

実行したプロンプト
このテーマを基に学会で発表したいです。
5枚で発表用のフォーマット案を作成してください。

下記の内容から論文を作成したいと思います。糖尿病の合併症に関係する論文を教えてください。

参考文献検索 プロンプト実行結果(1)
参考文献検索 プロンプト実行結果(2)

製薬企業によるOpenAI活用シナリオ例

製薬企業では、創薬や臨床、製造、営業・マーケティングなど、さまざまなところで生成AIの活用事例が増えてきています。

ある製薬企業様では、社員の約6割が生成AIを業務に使用しているとのことです。社内システムに生成AIを組み込むことで、さまざまなアイディア出しやMRの情報提供活動などに活用されています。

また、別の製薬企業様は、わずか1ヵ月で約9,300人が扱う生成AIのシステムを導入されました。日々の調べものやアイディア出しなどに、1日あたり約600人が常に使用している状態とのことです。

このように、生成AIを活用することで、製薬企業の皆様の業務が大きく変わってきています。

製薬企業におけるOpenAI活用シナリオ例

製薬企業向けCopilot for Microsoft 365 プロンプト集

生成AIを使用する際には、「生成AIをどのように使用すればよいのかわからない」「プロンプトがうまく作れずに思っているようなアウトプットが出てこない」といったさまざまな問題があるかと思います。

そこで、日本マイクロソフトでは、2024年5月に弊社ウェブページにて、製薬企業の方に適したCopilot for Microsoft 365のプロンプト例集を公開しました。MR向け、研究開発向け、バックオフィス向けのプロンプト例集をご用意しております。

Copilot for Microsoft 365 活用シナリオ・プロンプト集 - 製薬業界のビジネスを加速する生成AIの活用法

プロンプト例:MR向けプロンプト

製薬企業向けCopilot for Microsoft 365のプロンプト例として、シンポジウムで講演してもらう医師への依頼書を、Copilot for Microsoft 365を用いて作成してみました。

プロンプトは、細かく書いた方が期待するアウトプットが出やすいので、今回も非常に細かく書いています。

実行したプロンプト
#命令
あなたはマイクロソフト製薬に勤務するMRです。
マイクロソフト製薬が主催する胃がんに関するシンポジウムを予定
そのシンポジウムの中で東京病院の鈴木太郎先生に講演依頼の依頼書を作成してください。
#シンポジウムのテーマ
・胃がんと生活習慣の関係性
#条件
・企画書のタイトルは「講演の御願い」としてください
・最初に丁寧な挨拶文を入れてください。
・開催日は2024年8月25日としてください。
・他のセッションには、東京大学医学部教授から「胃がんの予防と早期発見の重要性」、国立がん研究センター所長から「胃がんの最新の治療法と展望」、パネルディスカッションがあります。
・会場は幕張メッセとしてください。
・シンポジウムのアジェンダは時間をつけ、テーブル形式で記載してください。
・シンポジウム開始時間は、13:00、終了時間は、17:30としてください。
・鈴木太郎先生の講演時間は60分としてください。
・謝金は5万円としてください

MR向けプロンプト集(例)

最後に

今回ご紹介したChatGPTの活用例やCopilot for Microsoft 365のプロンプト例集を参考に、日々の業務に役立てていただけますと幸いです。

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