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希少疾患の情報収集とニーズ ― 診断現場のリアルと製薬企業への期待Vol.3

テーマ希少疾患における情報提供はどうあるべきか
検討フェーズ課題を見つける 
記事公開日 2026.06.23
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取材年月:2025年9月

希少疾患の診断・治療の現場で、医師はどのように情報収集しているのでしょうか。今回は、医師が日々の診療のなかで実施している情報収集について伺いながら、製薬企業に求めるサポートについて伺いました。現場の声を知ることで、今後の情報提供や支援のヒントになれば幸いです。

背景・目的

希少疾患の診断、治療に向けた情報提供に苦慮している製薬企業担当者も多いのではないでしょうか。
本インタビューでは、稀少疾患の診断・治療経験をもつT先生に、日々の情報収集法や製薬企業への要望を伺いました。現場の声から、今後の情報提供や支援のヒントを探ります。

目次

詳細
  • ● 医師は希少疾患の情報収集に日常的にインターネットや書籍、MR、生成AIなど多様なチャネルを活用。一方で、情報の新しさや実臨床への有用性、信頼性の判断には課題を感じている。
  • ● 専門外の希少疾患では、診断や適切な検査の選択、相談先の判断に苦慮するケースが多い。院内外の専門医やコンサルシステム、人脈に頼る場面が多く、効率的な情報共有の仕組みが求められている。
  • ● 製薬企業には、定期的な情報発信(メールマガジン等)や、他施設の診断・治療実態、紹介先リスト、患者説明資材の拡充など、現場ニーズに即した支援が期待されている。
T先生プロフィール
施設形態
一般病院
診療科
血液内科
専門
造血幹細胞
年代
30代
チャネルマインドシェア
インターネット派
薬剤の処方意向
新薬は治療にメリットがあれば処方を検討
薬剤の新規採用
最終決定の場に関与する立場である

希少疾患の疑いにつながったのは医師自身の基礎知識と、専門医との連携

ご自身の専門領域の希少疾患Aに気づけた理由を教えてください。

希少疾患Aは医師国家試験や教科書にも載っており、基礎知識として知っていました。診断の決め手はMRIの所見と症状。院内の神経内科医にも相談しながら、検査を進めて診断に至りました。知識と症状の丁寧な観察が発見につながったと思います。

希少疾患Aの情報はどのように集めましたか?

参考書や報告書で診断基準や治療法を確認し、さらに難病情報センターや大学病院、日本リウマチ学会などの公式サイトも参照しました。製薬企業のサイトも検索でヒットすれば見ていますが、医療系ポータルサイトはほとんど利用しません。

この疾患は他の医師でも気づけるものでしょうか?

免疫膠原病の治療経験がないと、診断は難しいかもしれません。

ご専門から少し外れる希少疾患Bのケースについて教えてください。

SLE治療中の症状から疑い、院内の膠原病内科医に相談しました。さらに外部コンサルシステム「Medii Eコンサル」※1で治療法や保険適用についても意見を求めました。

  • ※1 Medii Eコンサル:株式会社Mediiが運営する医師向け専門医相談サービス(https://medii.jp/e-consult)

生成AIも活用し情報収集。質・鮮度・実用性に課題

専門領域の希少疾患について、日頃どのように情報収集していますか?

日常的にインターネットや書籍で調べています。また、製薬企業主催のWeb講演会をきっかけに、さらに書籍で調べることもあります。希少疾患に使う薬剤についてMRに直接問い合わせることもあります。

普段の情報収集チャネルとしてMRはどのような位置づけでしょうか。

MRさんはとくに依頼しなくても情報提供をよくしてくれます。助かることもありますが、そうではないこともあります。薬剤利用について問い合わせすることはあります。

インターネットやAIの活用状況を教えてください。

最近はChatGPTや「Medii Eコンサル」の生成AIも活用しています。AIで確認しているのは、診断はついたが他の疾患の可能性がないか、また、治療薬などについての情報です。(1)質問し回答をもらう、(2)論文検索、(3)サイトを検索してもらう、それぞれの目的で使っていますが、今後は(2)の論文や(3)サイト検索でもっと活用していきたいです。
あまり頻度は高くありませんが、海外の患者さんの来患前に想定質問を事前に準備するために利用したこともあります。

「Medii Eコンサル」以外の専門医相談サービスは利用されますか?

ほかにもあるのは知っていますが、利用する場所を統一したいのと、Medii Eコンサルはポイントがたまるということもあって、ほかのサービスは利用していません。

血液内科専門のサイトは利用されますか?

会員登録はしていますが、積極的には使っていません。検索結果として表示されたときに利用する程度です。内容に不満があるわけではないのですが、日常的に見てはいません。

ご専門から少し外れる希少疾患の場合、情報収集は来患後のタイミングとなりますか?

はい。来患前に情報収集は行っていません。

情報収集時の課題は何でしょうか?

「情報が本当に新しいものか」「実臨床に役立つか」が分かりづらい点です。書籍は著者などの情報で信頼性が担保されていますが、インターネット上の情報は玉石混交です。その情報が最新なのか、どこまで実臨床に役立つのか、判断が難しいと感じています。

疑い疾患リストアップから確定診断:専門医、専門施設との情報共有、施設間連携の仕組みが必要

専門領域の希少疾患を疑いリストアップする際の情報収集方法は?

初診時には先入観を持たずに自分で考えるということを大事にしたいと考えてはいますが、入院患者さんや特定の外来患者さんの診察前に、インターネットやカンファレンス、他の医師との相談を行い、疾患の概要や検査内容、初期治療の内容について情報収集することはあります。

この時点で欲しい情報は?

院内カルテで必ず鑑別すべき疾患リストを確認できると、カンファレンスなどで相談するタイムラグ無く診療を進めることができると思います。救急現場でも役に立つのではないでしょうか。
また、他の施設ではどのような検査や治療をしているのか、といった情報もどこかでまとまって確認できると良いと思います。自施設でできない検査の依頼先の情報も、現在は十分とは言えないと思っています。

確定診断時の情報収集方法は?

院内カンファレンスや外部コンサルシステムを利用します。インターネットでは、診断基準や特異的な症状、所見がなくてもルールアウト(除外)していいのかといった情報を調べます。
患者説明用資材を製薬企業サイトから取り寄せることもあります。資材への不満や要望はとくにありません。

確定診断後や他院への紹介時に必要な情報は?

確定診断のついた患者がどのくらいいるのか、他施設での診断や治療の方法などが分かると助かります。現状は院内でできる最大限のことを行ってはいますが、人脈を頼りに情報収集するしかなく、より効率的に情報を入手できれば治療方針にも良い影響があると考えています。

確定診断後に他院へ紹介する場合、どのような情報が必要でしょうか。

はい。基本的には自施設で治療する方針ですが、自院で対応できない治療法が必要な場合は他院へ紹介します。その際には、どの診療科に紹介したらいいのかという判断基準、その判断基準に基づいた紹介先の候補、各施設で輸血対応可能なのか、慢性期の療養先として適切なのか、といったような施設の詳しい情報が必要です。

確定診断前に他院へ紹介する場合もありますか?

総合病院としてたいていのことはできるので、基本的には自施設で治療する方針ですが、自施設でできる検査をしても診断が難しい場合や、患者さんに「大学病院に行きたい」といった希望がある場合などに、紹介します。

専門から外れる希少疾患の場合、専門領域の希少疾患と比較して治療までの流れで大きく変わる部分はありますか?

基本的には専門領域の希少疾患の流れと同じです。

専門から外れる希少疾患の場合、疑い~確定診断において情報収集で不足している点は何でしょうか。

まず、疑い疾患のリストアップの際に、どの診療科へ相談すればいいのか、どんな検査が必要なのか、必要十分な検査ができているのか、など、分からないことが多いです。特に多臓器に渡る病態の場合は、ベストな対応ができているのか分からず難しさを感じます。現在は、免疫専門医に相談しながら治療を進めています。
他施設への紹介の際にも、該当の病態を専門的に診てくれる施設を探すことに苦労しています。

治療:MR・講演会・インターネットを活用、他施設の治療実態情報が不足

専門領域の希少疾患の治療段階での情報収集はどのように行っていますか?

MRとのリアル面談やWeb講演会や情報交換会、「Medii Eコンサル」、インターネットでも治療に関する情報を収集しています。

専門領域の希少疾患の治療段階で不足を感じる情報はありますか?

他施設での治療方法に関する情報がもっと入手できると良いと思います。

専門から外れる希少疾患の治療段階で、不足している情報は?

症状や治療が専門と異なるため、困ることが多いです。免疫抑制剤によって起こる症状、またその症状が発現する頻度もさまざまで、特に免疫系疾患では専門外の医師が治療を続けるのは難しいと感じます。現在は、緊急時は病院内で共有されている免疫専門医へ相談したり、時間的余裕があるときには専門医が外来に勤務した際に相談、または外部コンサルシステムを利用するなどしています。

定期的で実践的な情報発信が希少疾患の早期発見に有効

他の先生方が希少疾患に気づけるようになるためにはどうしたらいいでしょうか。

例えばメールマガジンなど、希少疾患に関する情報を定期的に発信していただくことが啓発につながるのではないでしょうか。
またわたしの施設では、施設で疾患に気づき治療まで行うという方針で、わたし以外の先生も同じように疾患に向き合っています。施設の診断・治療方針や、相談できる専門医の有無、診療科、検査や治療が自院で対応できるのかどうかも関係があるのではないでしょうか。

製薬企業が知っておきたい医師ニーズ・とるべき対策・課題【考察】

希少疾患の疑い~治療において、希少疾患の診断・治療に関する最新かつ信頼性の高い情報、他施設の取り組み事例、患者説明資材、紹介先施設リストなど、臨床現場で即活用できる情報が望まれています。
希少疾患疑いを持った医師が診療を進めていくためには、専門医、専門施設との連携が不十分であり、施設や医師個人のネットワークに依存していることが明らかになりました。
疾患に気づくための情報提供と同時に、疑いを持った医師がスムーズに専門機関に相談・紹介できる仕組みを構築することが、希少疾患の発見、治療につながるのではないでしょうか。

【一般病院 血液内科 T先生】希少疾患疑い~治療における情報収集チャネルと必要な情報

今後明らかにすべきこと

医師インタビュー「希少疾患の情報収集とニーズ」では、希少疾患の診断~治療の経験のある医師インタビューを行っています。次回は腫瘍内科医に希少がんについてのお話を伺います。
(文:松原)

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