「DM白書」では、チャネル別利用意向やメディアマインドシェアといった定期的に調査している項目に加えて、毎号「特集」として時代のトレンドに合わせた設問を用意し、医師の利用状況や利用意向を調査しています。本記事では、2024年春号の特集テーマである「製薬企業とのリモートコミュニケーションの利用状況」の選定背景および調査結果の概要をご紹介します。

本記事は、製薬業界の動向を把握していただくことを目的としています。
DM白書に掲載されている詳細なデータについては、本記事では取り扱っておりませんのでご了承ください。

製薬企業とのリモートコミュニケーション利用状況、会話相手の変化を探る

選定背景

製薬企業とのリモートコミュニケーションの利用状況については、2020年のコロナ禍以前はスポットで調査し、コロナ禍以降は継続的に調査しています。（2023年では春号と秋号）

新型コロナ感染症の影響が落ち着き、医師の勤務先施設の訪問規制が緩んできている状況ではあります。一方で「医師の働き方改革」の影響もあり、訪問による面談の回数や時間はコロナ禍以前には戻らない状況となっています。また、MRリソースの削減に伴いリーチできない医師に対してリモート専任MRを通じて情報提供を行うといった話もよく聞くようになりました。そのような状況から、製薬企業側では継続的にリモート面談の推進・強化に取り組まれています。

一方で、製薬企業とのリモートコミュニケーションの利用状況については、2021年7月の調査を境に利用経験割合の減少が続いています。

リモートコミュニケーションの利用は、今後も減少が続くのか、「医師の働き方改革」など外部環境の変化によってふたたび状況が変わってくるのか、引き続き製薬企業とのリモートコミュニケーションの利用状況を調査していく必要があると考えています。

「DM白書2024年春号」の調査項目

そこで、「DM白書2024年春号」では、製薬企業とのリモートコミュニケーションの利用状況について、引き続き以下内容を調査しました。

● 直近3カ月における製薬企業とのリモートコミュニケーションの利用経験
● 利用企業とその会話相手^※1
● 最も評価する製薬企業とその会話相手^※1
● リモートコミュニケーションを利用しやすい時間帯

調査結果概要

調査の結果、直近3カ月における製薬企業とのリモートコミュニケーションの利用経験割合は半年前と比較して６ポイント程度増加しました。施設形態別や年代別などいずれの属性でみても半年前と比較して利用経験割合が増加しています。

会話相手の内訳は、学術部門の社員（MA・MSL含む）の割合が20%程度となり1年前から3.7ポイント増加しています。

リモートコミュニケーションの利用医師数を製薬企業別でみた場合、TOP20社のうち16社が半年前から増加しており、最も増加率が高い企業は47%増加という結果となりました。

リモート面談を実施しやすい時間帯は、18時～19時が最も多く、次にほぼ同じ割合で17時～18時となりました。

白書編纂チームからのコメント

リモートコミュニケーションの利用経験割合は2021年以降減少傾向となっていましたが、今回の調査結果では増加に転じました。この結果が一過性のものなのかを見極めるために、今後も調査を継続していきたいと思います。

なお、製薬企業別でみると、リモートコミュニケーションの利用経験人数の増減率や会話相手の内訳には差が出ており、製薬企業の取り組み状況、方針の違いが現れた結果となりました。

「医師の働き方改革」に伴う労働時間短縮計画が「策定され推進中」の施設に勤務している医師とそうでない医師とで利用経験割合を比較すると、「策定され推進中」の施設に勤務している医師が12ポイント程高い結果となっていました。

労働時間短縮計画が「策定され推進中」の施設に勤務している医師は、以前からリモートコミュニケーションの利用経験割合が高かったのかどうか、本調査結果だけでは明らかになっていませんが、医師全体としてリモートコミュニケーションの利用経験割合が増加した要因が「医師の働き方改革」の影響によるものなのか、製薬企業側の取り組みなどの影響によるものなのか、今後の調査で明らかにしていきたいと考えています。