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医療系インターネットサイトの使い分け Vol .2 - 公立病院 勤務医編 -

記事公開日 2024.09.25
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記事公開日 2024.09.25

取材年月:2024年6月

各製薬企業は、医療系ポータルサイトやオウンドサイトを活用して薬剤情報を提供していますが、先生方が、医療系インターネットサイトをどのように活用しているか掴み切れていません。本インタビューではこの点を明らかにしていきます。

今回は、消化器内科のN先生にお話を伺いました。

N先生プロフィール ・施設形態:公立病院
・診療科:消化器内科
・年代:40代
・メディアマインドシェア:MR派

目次

よく使う医療系ポータルサイトと利用状況

N先生がよく使う医療系ポータルサイトと、その利用状況や主な利用シーン、主なアクセス方法について伺ったところ、下表のような回答が得られました。

<よく使う医療系ポータルサイトと利用状況>

医療系ポータルサイトではどのようなコンテンツを利用されますか?

最も多く利用しているのはインターネット講演会です。医療系ポータルサイトは、全て共通してインターネット講演会の利用が多いと思います。インターネット講演会を製薬企業サイトで見ることはあまりありません。

インターネット講演会以外で利用しているコンテンツはありますか?

インターネット講演会以外では、医療系のニュースを見たりします。
また、m3の「MR君」は、こちらからアプローチしなくても最新の薬剤情報を提供してくれるので利用しています。学会よりも早かったり、発売前から情報が載っていたりするので便利ですね。

MR君からの最新情報は専門領域の薬剤ですか?それとも非専門領域も含めてでしょうか?

両方です。専門領域の薬剤について、わたしが情報を得ていない段階で、最初にm3から情報が入ることも結構ありますし、パッとサイトを開くと見ることができて強制感もありません。

各サイトを見るタイミングを教えてください

HOKUTO以外の医療系ポータルサイトは、昼休みに食事をしながら見ています。HOKUTOは病棟で困ったときに利用しています。
製薬企業サイトは、平日夕方以降か土日に見ます。日中の外来対応中は細かいことを調べられないので、患者さんに新しい抗がん剤を使用したいときなどに、併用禁忌などを調べます。必要に迫られて利用する感じですね。

医療系ポータルサイトに期待することはありますか?

すでに期待通りの情報は提供していただいていますが、最近インターネット講演会が減った気がするので少し残念です。インターネット講演会は自分が見たいものだけにアプローチすればよく、多すぎて困ることはないので。

製薬企業サイトに期待することはありますか?

製薬企業サイトの最初の画面で、「医師ですか」「薬剤師ですか」などを選ぶ画面があったり、会員登録をしないと細かい情報が見られなかったりしますが、正直煩わしく感じてしまいます。今知りたい情報だけが欲しいのに、会員登録することでメルマガなどが届くのも嫌ですし。
欲しい情報としては、薬剤のパンフレットに載っているような5年生存率や薬剤の奏効率などですが、一般の方には見せることができないと思うので、製薬企業サイト上で掲載するのは難しいのかなと。

各医療系ポータルサイトについての印象

各医療系ポータルサイトへの印象を伺いました。

<サマリ:各医療系ポータルサイトについて>

媒体 コメント
m3 <印象>
・会員数は一番多くて、一番大手という印象。
・m3に登録していない医師を探す方が難しいのでは。
<情報>
・最新の薬剤情報を最初に提供してくることがある。
・サイト内の情報の信頼度は高い。
・動画は文章とうまく使い分けているので、見たいところから見ることができる。
・医療系の質問と回答という、掲示板のような相談ページもある。
日経メディカルOnline <印象>
・あまり特色がないのが特色。
・動画が多い印象。
<情報>
・薬剤の最新の動画は時間が少し長め。
<インターネット講演会>
・インターネット講演会で利用することが多い。
・開催予定がやや見にくい。
・休憩時間や歯磨きをしながら短時間で見ることができる。
CareNet <印象>
・動画が多い印象で、薬剤の全般的な情報やトピックがあることが多い。
<情報>
・m3と異なり、動画の内容は再生してみないと内容がわからない。
・薬剤の最新の動画は時間が少し長め。
<インターネット講演会>
・開催予定がやや見にくい。
MedPeer <印象>
・m3とCareNetの中間のような印象。
<情報>
・薬剤情報は説明がほぼ添付文書に近いかたち。
・副作用や併用禁忌などをサイト内で見ることができる。
・薬剤の最新情報が得られる。
・薬剤の最新の動画は時間が少し長め。
<インターネット講演会>
・開催予定が見やすい。
・土日に開催していることがあるので重宝している。
Medical Tribune <印象>
・ほかのサイトと一線を画しているイメージ。
<情報>
・薬剤のコンテンツはあまり見ない。
・ほかのサイトにはない、変わった症例の相談や希少疾患の診断と治療のようなコンテンツがある。
・医学や薬剤以外の統計解析、開業、経営、金融マネジメント、投資などの、ほかのサイトにはないような情報がある。
・ほかのサイトと毛色の違う情報を提供してくれるが、量が少ないのでもっと増やしてほしい。
HOKUTO(アプリ) <印象>
・今困っていることをすぐに解決してくれる。
・アプリなのでパソコンを開かなくても臨床の現場ですぐに調べることができる。
<情報>
・「癌取り扱い規約」などのステージ検索ができる。
・抗生剤の用量や腎機能が悪化している人への減量基準、クレアチニンクリアランスの計算式などが入っていて、臨床の現場で役に立つ機能がある。
・ガイドラインもアップデートされている。

先生の処方判断に最も影響を与えているサイトはどちらでしょうか?

m3です。最新の薬剤情報が多いのと、内容もわかりやすく表示されているので。医療系ポータルサイトとしては一番はじめに登録していて、使用経験が長いので見やすいのかもしれませんが、それを抜きにしても検索しやすいと思います。
また、ひとつの薬剤についてテーマを絞って情報提供していることが多いので、製薬企業がアピールしているトピックをつかむことができます。

各サイトで行われているインターネット講演会の違いや印象などについて教えてください

インターネット講演会の回数や頻度は各サイトで少し違いますが、開催時間は18時半から19時台が多いので、同時刻のインターネット講演会がかぶっていることもあります。内容はどのサイトもほぼ同じなので、どのサイトを見てもあまり違いはありません。

各サイトでの製薬企業スポンサードコンテンツの違いや印象を教えてください

m3は、そのときそのときで薬剤についてのテーマを決めて情報提供している印象です。それに対して、日経メディカルOnlineは歯磨きなどをしながら気軽に見ることができる動画が多いので、ついでに知識が得られてラッキーという感じです。

MRとの連携や、製薬企業サイトへのアクセスがしやすいのはどのサイトでしょうか?

m3ですね。コンテンツの最後の方にアンケートがついていることがあり、レアな疾患などについてアクションすると、それに関する情報をしつこくない程度で提供してくれます。
また、疑問をコメントで書いたりするとインターネット上のMRが返信してくれるので、わざわざMRに連絡するほどでもない内容について確認するときなどに助かります。

仮に、今後ひとつの医療系ポータルサイトだけしか使えなくなるとしたら、どちらのサイトを使い続けますか?

やはりm3ですね。次点は、インターネット講演会の数が多くて閲覧しやすく、薬剤情報も検索しやすいMedPeerです。

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトの違い

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトについて、それぞれの印象・イメージ、処方判断への影響を伺いました。

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトの項目ごとの違い

医療系ポータルサイト 製薬企業サイト
印象・イメージ 医療以外の情報も掲載しているので、何気なく見るのにいい 一字一句が厳選されているが、お堅いイメージ
処方判断 基本的に医療系ポータルサイトの情報で事足りる 詳しく調べる必要があるとき、初めて処方する薬剤、レアな疾患、古い薬剤を調べる際に利用
インターネット講演会 ポイントが付くという点で利用は多い 地域のインターネット講演会を視聴
コンテンツの探しやすさ サイト内のレイアウトが統一されていて、わかりやすい サイトによって違うが、ジャンル分けされていると、わかりやすい
MRとの連携 m3のMR君は、MRと連携しやすい サイト⇒コールセンター⇒MRという流れで連絡する

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトのイメージの違いを教えてください

医療系ポータルサイトは、医学や薬剤以外の情報、掲示板の書き込みなどもあるので、何気なく見るのにもいいのかなと思います。
製薬企業サイトは、何気なく見ることはないので、お堅いイメージですね。患者さんも処方されて気になる薬剤を製薬企業サイトで調べたりすると思うので、製薬企業も相当気を遣ってサイトを作っているのではないでしょうか。一字一句が厳選されたサイトですが、逆に堅すぎる感じはします。

処方の最終判断や新薬の採用に影響を与えるのはどちらでしょうか?

医療系ポータルサイトです。新しい情報がダイレクトに伝わってきて、わかりやすく解説してあるので。医療系ポータルサイトだけでも情報量は十分ですが、もう少し詳しく調べておこうというときに製薬企業サイトを確認することはあります。

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトで、開催しているインターネット講演会の違いや印象などを教えてください

インターネット講演会自体の違いは、医療系ポータルサイトと製薬企業サイトではあまりありません。
医療系ポータルサイトと製薬企業サイトのどちらでも視聴することはありますが、医療系ポータルサイトから製薬企業サイトにいってそこから見るというかたちで連携していることもあります。
ポイントが付くという点では、医療系ポータルサイトの利用が多いのかもしれません。
ただ、MRが直接案内してくる地域のインターネット講演会は、医療系ポータルサイトには載っていないので、製薬企業サイトで視聴します。

医療系ポータルサイト内にある製薬企業のスポンサードコンテンツと、製薬企業サイトに載っている薬剤に関するコンテンツについて、違いや印象などを教えてください

医療系ポータルサイトは、サイト内のレイアウトなどが統一されていて、使い慣れているせいもあるかもしれませんが、全体的にわかりやすく表示されています。
製薬企業サイトの印象は、作りこみ方に左右されますね。製薬企業サイトによっては、消化器系薬剤や血管系薬剤というようにジャンルごとに分けて、表示がわかりやすいものもあります。

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトではどちらの方がMRと連携しやすいですか?

医療系ポータルサイトだと思います。m3のMR君はMRと連携しやすいので、ちょっとした疑問は解決できます。
医療系ポータルサイトでも解決できない疑問などは、製薬企業サイトのコールセンターに電話をして、担当のMRにつないでもらいます。頻繁に会っているMRであれば直接連絡することもありますが、担当MRがわからない場合にはコールセンターを経由します。
製薬企業サイトに、コールセンターを経由せずにダイレクトで担当MRに連絡できる機能があったら便利ですね。

薬剤情報収集において、医療系ポータルサイトと製薬企業サイトのどちらかしか使えなくなるとしたら、どちらを使い続けますか?

医療系ポータルサイトを使います。医療系ポータルサイトさえ登録しておけば、ほかに余計な登録をしなくても、見たい情報を幅広く見ることができるので。
製薬企業サイトは、登録しないと見たい情報が見られなかったりするので、しばらく処方していない薬剤や、めったに処方しない薬剤について投与量などを確認する際に見るぐらいです。

新規で処方する薬剤の情報を、製薬企業サイトで調べることはありますか?

完全に新規で処方する薬剤に関しては、調べることはあります。あとは、専門領域の疾患だけれども、数年に1人来るかどうかというレアな疾患については、適応症などについて製薬企業サイトで添付文書を調べます。
また、最近発売されてトピックとなっている薬剤については、m3でも十分に情報は入りますが、少し古い薬剤の情報については製薬企業サイトで確認します。

ラボ編集部より

今回インタビューしたN先生は、医療系ポータルサイトをお昼休みや休憩中、土日などの休日に利用し、各サイトの特徴に合わせて効率よく情報収集しています。

なかでも、m3は一番長く利用しており、情報量の多さやサイトの見やすさ、サイト内の情報への信頼度が高いことから、処方判断に影響することも明らかになりました。

ただ、各医療系ポータルサイトで特徴はあるものの、コンテンツや情報に大きな差はないことが伺えました。

そのため、医療系ポータルサイトを選定する際には、
(1)アクティブなターゲットDr.が多い
(2)想定コストパフォーマンスが良い
というふたつが検討の軸になると考えられます。

各サイトについて特徴的だったのは、m3が「最新の情報を提供している」、MedPeerが「インターネット講演会を土日にも開催している」、HOKUTOが「臨床の現場で役立ち、最新のガイドラインも確認できる」、Medical Tribuneが「ほかのサイトと毛色の違う情報を提供している」という4点でした。

このことから、薬剤によっては、各サイトの特徴をうまく活用することも有効だと考えられます。

一方、製薬企業サイトは、以下の4つのシーンで活用していることが明らかとなりました。

(1)医療系ポータルサイトで気になった情報をさらに詳しく調べる
(2)完全に初めて使用する薬剤の情報を調べる
(3)レアな疾患についての適応症などについて調べる
(4)医療系ポータルサイトでは扱わない古い薬剤の情報について調べる
このことから、製薬企業サイトには、医師の利用シーンに合わせた情報を検索しやすい状態で揃えておくことが必要であると考えられます。

次回は、クリニック院長のO先生のお話を紹介します。(2024年10月公開予定)

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