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医療系インターネットサイトの使い分け Vol.1 - 私立病院 勤務医編 -

記事公開日 2024.08.28
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記事公開日 2024.08.28

取材年月:2024年6月

各製薬企業は、医療系ポータルサイトやオウンドサイトを活用して薬剤情報を提供していますが、先生方が、医療系インターネットサイトをどのように活用しているか掴み切れていません。本インタビューではこの点を明らかにしていきます。

今回は、泌尿器科のN先生にお話を伺いました。

N先生プロフィール ・施設形態:私立病院
・診療科:泌尿器科
・年代:40代
・メディアマインドシェア:マルチメディア派

目次

よく使うインターネットサイトと利用状況

N先生がよく使うインターネットサイトと、その利用状況や主な利用シーン、主なアクセス方法について伺ったところ、下表のような回答が得られました。

よく使うインターネットサイトと利用状況

医療系ポータルサイトではどのようなコンテンツを利用されますか?

インターネット講演会が好きでよく視聴します。現状、どのサイトからも情報を得られるのでありがたいですし、勉強になります。

先生の専門領域に強いサイトはありますか?

m3です。医師の専門領域に応じて情報提供してくれますし、専門領域の情報量はm3が一番多いと思います。

製薬企業のWebサイト(以下、製薬企業サイト)のインターネット講演会や、市販直後調査などのデータを見ることはありますか?

製薬企業サイトでインターネット講演会を見ることもあります。同じ内容がm3やMedPeerでも同じ時間に開催されていることもありますが、どこで見ても一緒ですね。
市販直後調査などの情報は、m3の「MR君」で配信されているので、そちらで確認しています。市販直後調査などを製薬企業サイトで再度確認しようとはならないですね。

各医療系ポータルサイトについての印象

各医療系ポータルサイトへの印象を伺いました。

サマリ:各医療系ポータルサイトの印象

媒体 コメント
m3 <印象>
・会員数が多く、歴史が長いイメージ。
・研修医時代から使っている(最初に登録したのはm3か日経メディカルOnline)。
<情報>
・コンテンツの量が多い。
・専門領域と非専門領域の情報のバランスが良い。
・製薬企業のスポンサードコンテンツは同じような情報が載っていることが多い。
<インターネット講演会>
・非専門領域の情報が少ない印象。
・ポイントが視聴時間に応じて変わる仕組みは良いと思う。
<製薬企業との連携>
・サイト内でMRとやり取りができる(8名)。
CareNet <印象>
・新しいイメージ。MedPeerと似た印象。
・サイトを見やすくするための工夫がされている。
<情報>
・薬剤情報やインターネット講演会以外のコンテンツが、MedPeerよりもやや少ない印象。
<インターネット講演会>
・専門、非専門にかかわらず実施している。
・視聴で得られるポイントが良い。
<スポンサードコンテンツ>
・製薬企業のスポンサードコンテンツは充実しているが、特定の企業のものが多い。MedPeerよりは少ない印象。
MedPeer <印象>
・新しいイメージ。CareNetと似た印象。
<情報>
・薬剤の情報が一番多い印象。
・サイトを見やすくするための工夫がされている。
<インターネット講演会>
・サイト内に配信予定カレンダーがあるが、案内されないものがある。
・視聴で得られるポイントは以前より下がった。
<スポンサードコンテンツ>
・充実しているが、特定の企業のものが多い。
<製薬企業との連携>
・サイト内でMRとやり取りができるが、数が少ない(1名のみ)。
・掲示板は、使おうとしている薬の参考情報として利用する。
日経メディカルOnline <印象>
・会員数が多く、歴史が長いイメージ。m3と似た印象。
<情報>
・薬剤情報よりも、ニュースやインターネット講演会が多い印象。
・コンテンツ量はm3より少ない。
・もう少しコンテンツの内容が多くてもいいかなと思う。
Medical Tribune <印象>
・インターネット講演会に特化したイメージ(それしか見ていない)。
・他の媒体と違い、研修医や学生向けの教育的なものが多く、また、演者も一般病院の若手の先生が多く、やわらかい印象。
HOKUTO(アプリ) <印象>
・一番新しい。
・ほかのサイトと一線を画す印象。
・まだ使いこなせていないが、ツールが充実しているので使いこなせば臨床に役立ちそう。
<情報>
・医学的なことだけでなく、日常生活や趣味などのニュースを見ている。

先生の処方判断に最も影響を与えているサイトはどちらでしょうか?

m3です。サイトから配信される内容だけでなく、何か疑問が生じたときにサイト内のMRと直接やり取りもできるので。病院担当のMRがm3のMR君でも担当だったりすると、連絡しやすくて助かります。

各サイトで行われているインターネット講演会の違いや印象などについて教えてください

Medical Tribuneは、一般病院勤務の若めの先生が演者を務めている講演会が多い印象です。若めの先生や一般病院の先生が演者の方が、堅苦しくなくて柔らかい印象がありますね。ほかのサイトは、大学の教授や講師の先生が演者のことが多いので、どれもあまり変わらない印象です。
各サイトの視聴ページの機能に差は感じません。視聴忘れをしないための工夫の差については、インターネット講演会の配信日にリマインドメールが来るサイトもありますが、視聴忘れ防止のために自分でアラームをセットしているので、サイト間の差はわかりません。
また、講演会は帰宅時にスマホで見ることがよくありますが、動画で映し出されるFigureなども、スマホでも十分に見ることができるので困ることはありません。

医療系ポータルサイトのインターネット講演会が、処方に影響することはありますか?

インターネット講演会の視聴のみで、処方検討するケースもあります。ただ、インターネット講演会は製薬企業がスポンサーなので、宣伝ではないかといった疑いの目で見ていて、真偽は自分で判断しています。
インターネット講演会は薬剤を評価するきっかけにはなりますが、処方するかどうかは薬剤の効果や患者さんの声を含めた自身の実臨床での経験、処方したことがない薬剤の場合は臨床試験データや周りの医師へのヒアリングを基に最終判断をします。
コロナ禍以降、臨床試験のデータを製薬企業サイトで自ら確認することが増えましたね。

医療系ポータルサイトでもらえるポイントは、視聴の動機づけになりますか?

ポイントはもらえた方がいいですが、あくまでもおまけ程度で勉強になる動画を配信してくれたら満足です。

仮に、今後1つの医療系ポータルサイトだけしか使えなくなるとしたら、どのサイトを使い続けますか?

m3です。専門領域だけでなく非専門領域の情報もあり、インターネット講演会やコンテンツも充実しているので。m3が一番好きというわけではありませんが、どれを取るかと言われると、情報量が多くてバランスのいいm3かなと思います。

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトの違い

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトについて、それぞれの印象・イメージ、処方判断への影響を伺いました。

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトの項目ごとの違い

医療系ポータルサイト 製薬企業サイト
印象・イメージ 広く浅い情報を収集 狭く深い情報を収集
処方判断 基本的にはサイト上の情報で事足りる 処方判断に迷うときに参考にする
インターネット講演会 違いは感じない
薬剤コンテンツ 情報の種類・量が多い 薬剤の情報が充実している
MRとの連携 (m3、MedPeerは)サイト内で気軽にMRにメッセージを送ることができる MRのアポイントが取れるサイトもあるが、MRに直接連絡したほうが早い

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトのイメージの違いを教えてください

広く浅くは医療系ポータルサイトで、狭く深くは製薬企業サイトのイメージです。
製薬企業サイトは、ドラッグインフォメーションが充実しているイメージで、詳しく薬剤の情報を見るのであれば製薬企業サイトの方が適しているのではないでしょうか。
一方、広く情報を集めるのであれば、医療系ポータルサイトの方がコンテンツやインターネット講演会が充実していると思います。

処方の最終判断や新薬の採用に影響を与えるのはどちらでしょうか?

医療系ポータルサイトです。わたしの場合は薬剤情報を知るきっかけは医療系ポータルサイトで、仕入れる情報の量も多いので、医療系ポータルサイトの方が影響すると思います。
ただ、処方判断に迷うようなケースでは、製薬企業サイトを見ることもあります。

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトで、開催しているインターネット講演会の違いや印象などを教えてください

あまり違いはないと思います。MRから案内された製薬企業サイトの講演会が、医療系ポータルサイトでも載っていることはあるので。
視聴後のMRからのフォローがあるとありがたいのですが、実際はあまりなく、わたしからMRに疑問点を聞くことが多い状況です。

医療系ポータルサイト内にある製薬企業のスポンサードコンテンツと、製薬企業サイトに載っている薬剤に関するコンテンツについて、違いや印象などを教えてください

大きな違いはないと思います。ただ、薬剤の情報に限定した場合、製薬企業サイトの方が充実しているとは思います。

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトではどちらの方がMRと連携しやすいのでしょうか?

本来は製薬企業サイトなのでしょうが、ポータルサイト内で気軽にMRにメッセージを送れるので、現状ではポータルサイトのほうが連携しやすいと思います。
製薬企業サイトからMRにアポイントを取ることもできますが、担当MRに直接電話やメールをした方が早いですし。

薬剤情報収集において、医療系ポータルサイトと製薬企業サイトのどちらかしか使えなくなるとしたら、どちらを使い続けますか?

簡単に情報にアクセスできるのと、気分的にも楽なので、医療系ポータルサイトを使います。
製薬企業サイトをメインで使っていないというのもあると思いますし、製薬企業サイトはアプリではないので、アクセスするのがしんどいというのもあります。製薬企業サイトのアプリがあれば使うかもしれません。
やはり、広く浅く医療系ポータルサイトで情報収集して、気になった情報を各製薬企業サイトの深い情報にアクセスできるのがいいと思います。

製薬企業サイトで、添付文書や臨床試験情報以外で深く知りたい情報はありますか?

似たような薬剤の比較情報は一番知りたい情報です。ただ、どこまで開示していいのかという問題があるので、難しいとは思いますが。

製薬企業サイトで、実臨床で蓄積されてきた副作用情報を検索できるツールや、個々の症例情報を見ることができるコンテンツがあった場合、参考になりそうですか?

副作用などの薬剤のデメリットに関する情報は知りたいので、参考になると思います。製薬企業は自社の薬剤のメリットを強調する傾向にあると思いますが、デメリットも伝えてくれる企業は信頼感が増しますね。

製薬企業サイトで患者さん向けの資材などを利用することはありますか?

あります。ただ、サイトからダウンロードするというよりは、担当のMRに連絡してパンフレットなどを郵送してもらいます。

薬剤や疾患以外の、医療経営や医療統計などの情報を製薬企業サイトで見ることはありますか?

ありません。そのような情報へのリンクがうまくつながっていれば見ることはあるかもしれませんが。

医療系ポータルサイトでは広く浅く情報収集されるとのことですが、重厚な情報があった場合は見ますか?

重い情報だと、今はいいやとなってしまうかもしれませんね。医療系ポータルサイトは朝の通勤時間にスマホで必ず見るので、その流れで見終えられる量であれば見るとは思いますが。
ちなみに、通勤時には6個のサイトを並んでいる順にパッと見て、気になる情報を少し深く見るという感じで、30分程度ですべて見終えています。
その中に処方を検討するに値する情報があった場合には、診療時間の空き時間や違う日に製薬企業サイトで確認したりします。

ラボ編集部より

今回インタビューしたN先生は、複数の医療系ポータルサイトを朝の通勤時間に毎日利用しており、薬剤情報やインターネット講演会だけでなく、医療業界のニュースなど幅広く情報収集されています。

メインで利用しているサイトはm3ということで、m3に掲載されている情報が処方判断に影響することも明らかになりました。

一方、各医療系ポータルサイトで特徴はあるものの、コンテンツや情報に大きな差はないことが伺えました。

そのため、医療系ポータルサイトを選定する際には、
(1) アクティブなターゲットDr.が多い
(2) 想定コストパフォーマンスが良い
という2点が検討の軸になると考えられます。

各サイトの印象について特徴的だったのは、m3が「専門、非専門問わず情報が充実している」、Medical Tribuneが「若手向けのインターネット講演会を配信している」、HOKUTOが「臨床サポートコンテンツが充実している」という3点でした。

このことから、薬剤によっては、各サイトの特徴をうまく活用することも有効だと考えられます。

医療系ポータルサイトと製薬企業サイトの比較では、医療系ポータルサイトからの情報収集を優先されていることも伺えました。

ただ、広く浅く情報収集する際は医療系ポータルサイト、狭く深く情報収集する際は製薬企業サイトを利用するという使い分けをされていることから、医療系ポータルサイトで薬剤に興味を持った段階で製薬企業サイトに遷移するケースが多いと思われます。

このことから、医療系ポータルサイトから製薬企業サイトへの導線をしっかりと構築し、製薬企業サイトでは医療系ポータルサイトにはない深い情報を充実させておくという2点を意識するのが良いと言えそうです。

次回は、公立病院に勤務されるN先生のお話を紹介します。(2024年9月公開予定)

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